生産性の高い流体システムを構築するには
今日のオイル/ガス業界は、新たな課題に直面しています。投資利益率を最大限に高めるべく、革新的な掘削/生産技術と共に、さらに深い油井や長い海底タイバックが使用されています。船上で使用する装置を慎重に選定することで、資産の耐用期間にわたって、過酷な海洋環境において安全かつ信頼性の高いオペレーションを行うことができます。Swagelok® FKシリーズ継手は、標準のSwagelokチューブ継手ではカバーできなかった上記のニーズを満たす設計を採用しており、大半のオイル/ガス・アプリケーションに適しています(最高使用圧力:137.8 MPa)。本ホワイト・ペーパーでは、適切なプロセスに従ってFKシリーズ継手を取り付けることで高い信頼性を実現してメンテナンス・コストを削減する方法、FKシリーズ継手の独自設計によって漏れを低減して環境への影響を緩和する方法、腐食からシステムを保護して全体的な安全性を向上させる方法について詳しく紹介します。
今日のアップストリーム・オイル/ガス市場において効率的にオペレーションを行うには
世界各地で新たな油井がさらに深くまで掘削されているため、多くの重要な生産システムは、世界で最も過酷なアプリケーションにおいても比類のない安全性と信頼性を備えていることが求められます。非常に腐食性が強い上に、オペレーション温度が高くなる一方の環境下であっても、オーナーやオペレーターは、装置に対して20~30年もの耐用年数を求めています。
一方で、市場の状況は目まぐるしく変化し、環境規制はますます厳しくなっているため、メンテナンス・コストの削減、生産のスピードアップ、環境影響の低減、全体的なオペレーションの安全性向上へのニーズが高まっています。こうした信頼性の高いパフォーマンスを実現するのは、必ずしも容易ではないものの、不可能というわけではありません。特に以下のようなアプリケーションにおいて、信頼性が高く漏れの無い締め切りを重要な部品が実現できれば、オイル/ガスのオペレーターが抱える課題を解決することができます。
ケミカル・インジェクション(CI)・システム
石油掘削におけるケミカル・インジェクション・システムは、高い精度と再現性での薬液注入が求められます。漏れの無いシール性能は、人と環境を守るだけでなく、いかなるダウンタイムによる深刻な生産ロスをも防ぎます。一般的なケミカル・インジェクション・システムには数百もの接続個所がありますが、そのどれもが潜在的なリーク個所となり得ます。
油圧ユニット(HPU)
HPUは、トップサイド、タレット、海底生産システムに動力源としての油圧を供給します。HPUの停止はこれらの装置の停止につながり、それによる経済的損失は日々莫大なものとなりかねません。HPUは複雑な装置の集まりで、チューブ継手はこれらの装置の安定操業に欠かせない構成部品です。
トップサイド・アンビリカル接続ユニット(TUTU)
トップサイド・アンビリカル接続ユニットは、海底への油圧・電力・信号ケーブルの接続だけでなく、トップサイドとサブシー装置を安全に遮断・絶縁してメンテナンス作業の安全を確保するだけでなく、漏れの無い接続を維持する必要があります。このシステムを構成する部品は重要な役割を担っており、高い信頼性と品質が求められます。これらに不具合が生じると、拡散の封じ込めや事故発生の抑止ができなくなり、システムの停止や生産ロスにつながりかねません。
Swagelok FKシリーズ継手は、このようなアプリケーションにおいて、信頼性の高いパフォーマンス、最小限のメンテナンス、優れた安全性を実現する上で、理想的なソリューションを提供します。
本ホワイト・ペーパーでは、FKシリーズ継手がアプリケーションのニーズに応えられる理由について紹介します。
例えば:
- 取り付けのベスト・プラクティスに従うことで、効率的かつ再現性のある組み立て、ならびに長期にわたって信頼性の高いパフォーマンスが実現する理由
- アップストリーム領域において一般的に使用されている従来の継手技術に比べて、高レベルのパフォーマンスを実現するエンジニアリングと設計の特性
- FKシリーズ継手の材料成分を考慮することで、過酷な環境下でも信頼性の高い耐食性を実現
FKシリーズ継手の取り付け技法
FKシリーズ継手は、中圧アプリケーションにおいて長期にわたって漏れの無いパフォーマンスを発揮します。他の継手に比べて、その耐用年数にわたって最小限のメンテナンスで済むため、メンテナンス・コストの削減およびオペレーション効率の向上に貢献します。
FKシリーズ継手を取り付ける際は、アプリケーションや取り付け環境(例えばワークショップなのか現場なのか)に応じて、信頼性が高く再現性のある方法が複数存在します。いずれの方法も正しく行うことで、信頼性の高い接続を実現することができます。
チューブの前処理
FKシリーズ継手を適切に取り付けるには、まずチューブの適切な前処理を行う必要があります。
重要なのは、FKシリーズ継手には厚肉チューブが必須だということです。厚肉チューブを切断する際は、金のこか電動のこぎりを使用してください。電動のこぎりを使用すると、均一かつスムーズに切断することができます。
次に、継手を適切に機能させて漏れを無くすには、チューブのバリ取りが欠かせません。バリがシステムに混入すると、他の部分の部品が損傷するおそれがあります。バリが小さな穴やベントに詰まったり、バルブ・シートやソフト・シール(Oリングなど)にスクラッチ傷をつけたりすることがあるためです。手動タイプのバリ取り用ツールでも問題ありませんが、電動式のツールを使用することで、エッジをさらに滑らかに仕上げることができます。
必要なツール
チューブの前処理が終わったら、以下のツールを使用してFKシリーズ継手を取り付けます:
- ベンチ・バイス(継手ボディの固定用)
- 適切なサイズのレンチおよびマーカー(回転数による取り付けの場合)
- トルク・レンチおよび適切なサイズのオープン・エンド・ヘッド(トルク値による取り付けの場合)
- 予備締め付けツール(予備締め付けを行ってから取り付ける場合)
- FKシリーズ継手用のギャップ検査ゲージ
- FKシリーズ継手用の挿入深さマーキング・ツール(継手ボディ内の肩に確実に当たるまで差し込むために必要なチューブ長さをマークするために使用)
トルク値による取り付け
トルク値でFKシリーズ継手を取り付ける場合は、適切なサイズのトルク・レンチが必要です。以下の取り付け方法は、外径サイズが1/4~9/16 インチのFKシリーズ・チューブ継手に適用されます。
回転数による取り付け
回転数で取り付ける場合は、トルク・レンチではなく一般的なレンチを使用します。必要なトルク値を計算する必要はありません。よって、回転数による取り付けの方が、作業の一貫性が高まるかもしれません。以下の取り付け方法は、外径サイズが1/4~3/4 インチのFKシリーズ・チューブ継手に適用されます。
2. 次に、マーカーでナットに目印を付けます。継手ボディを固定し、適切なサイズのレンチを使用して、ナットを1 回転まわします。
予備締め付け
数多くの接続作業を順次行う場合は、予備締め付けを行うことをおすすめします。例えば、ワークショップ環境で継手の予備締め付けを行ってから、組み立てライン工程に進む方が効率的というケースもあるでしょう。以下の取り付け方法は、外径サイズが1/4~9/16 インチのFKシリーズ・チューブ継手に適用されます。
2. 次に、部品装着カートリッジからプラスチック製アーバーを取り外します(取り外したアーバーは以降使用しません)。
5. ナットに目印を付けてから予備締め付けツールを固定し、ナットを3/4 回転まわして締め付けます。
予備締め付けは、マルチヘッド・ハイドロリック・スウェージング・ユニット(MHSU)を使用すると、さらに効率的に行うことができます。
トレーニング
FKシリーズ継手を取り扱う際は、スウェージロックが提供している包括的なトレーニング・プログラムの受講をご検討ください。上記の取り付け方法をさらに詳しく取り上げます。トレーニングを受講することで、FKシリーズ継手を正しく取り付ける方法を習得できるほか、メンテナンス・コストを削減することにもつながります。トレーニングはすべて、スウェージロック認定の専門スタッフが講師を務めます。世界各地で開催しているため、プロジェクトの場所に合わせて受講場所をお選びいただけます。
漏れの無いパフォーマンスを実現する設計とエンジニアリング
FKシリーズ継手は、正しく取り付ければ、その独自の設計特性によって、重要なオイル/ガス・アプリケーションにおいて長年にわたって信頼性の高いパフォーマンスを発揮します。その漏れの無いパフォーマンスによって、全体的なシステム効率が向上するほか、潜在的な排出物を削減することで、プラットフォームが環境に与える影響を軽減することができます。
グリップの強度
FKシリーズ継手には、2個のフェルールを使用したメカニカル・グリップ構造を採用しています。これは、強力にチューブをグリップすることが求められる継手にとって理想的な設計と言えます。硬化処理を施したフロント・フェルールが物理的にチューブを絞り込むことで、非常に高い圧力に対応することが可能になります。表面硬化処理を行ったフェルールによって、妥協が許されないアプリケーションにも対応可能な優れたグリップ強度が生まれるのです。
耐振性
FKシリーズ継手のヒンジ・コレット機能により、グリップ力を維持しながらも、継手がわずかに動く(「スプリング・バック」)ことができるため、優れた耐振性が実現します。このため、常にオペレーションによる振動にさらされるアプリケーションにおける信頼性が向上します。また、スプリング・バックによって、継手による接続部は合金の膨張や収縮につながりかねない熱変化にも持ちこたえることができるため、パフォーマンスが低下することがありません。
流体がガスの場合でも漏れの無いシール
FKシリーズ継手は、チューブに沿った接触部と継手ボディに沿った接触部の2つのゾーンからなる広いシール面を形成します。これらのコンタクト面にはわずかに角度をつけて最適な応力レベルを生み出すことで、妥協のないシール性を維持します。FKシリーズ継手は、2個のフェルールを使用してこのようなシールを実現しています。フロント・フェルールは長い接触面を、バック・フェルールはチューブをしっかりとグリップして面シールを形成します。フロント・フェルールの表面を精密に機械加工することで、信頼性が高く、流体がガスの場合でも漏れの無いシールが実現するのです。
最適なサイズ
FKシリーズ継手のサイズは最大1 インチで、今日の堀削方法で必要な深さにも適しています。大きなサイズの継手であれば、非常に深いところまで掘削するプラットフォームでも大流量を達成することができるため、他の継手には無い効率が得られます。
比較:FKシリーズ継手とコーン&スレッド継手
コーン&スレッド継手は、高い圧力に対応可能なことから、従来から重要なオイル/ガス・アプリケーションに採用されてきました。しかし、コーン&スレッド継手には、FKシリーズ継手と比較すると、非効率性や追加のメンテナンスにつながるような欠点があります。
取り付け
コーン&スレッド継手を取り付けるには、専門知識や経験が必要な上、取り付け工程では多大な労力や時間を要します。また、コーン加工用ツールや、切断工程で摩擦を軽減するための切削潤滑液など、特殊なツールやアイテムなども必要になります。これに対し、FKシリーズ継手は、一般的なレンチとバイスがあれば、適切に取り付けることができます。FKシリーズ継手は、同等のコーン&スレッド継手の約1/5の時間で取り付けることができる上、初めから漏れの無いシールを形成します。
メンテナンス
FKシリーズ継手は、最初の取り付けを正しく行って漏れの無いシールをいったん形成することができれば、その後の手直しはほぼ不要なため、メンテナンスの全体的なコストを大幅に削減することができます。一方コーン&スレッド継手は、時間が経つにつれて自然と緩んで外れることがあるため、注意が必要です。通常のトップサイド取り付けにおいて、コーン&スレッド継手を使用した場合、最初の取り付けから圧力試験までの間に手直しが必要になる接続部の割合は約20%と推定されています。これに対し、FKシリーズ継手は適切に取り付けさえすれば、取り付け手順がシンプルなため手直しはほとんど不要な上、ギャップ検査ゲージを使用して取り付け状態を確認することができます。
複雑性
常に衝撃や振動を伴うシステムにおいてコーン&スレッド継手を使用する際は、耐震部品が別途必要です。耐震グランドを使用せずに取り付けたり、準備や取り付け工程を熟知していない作業者が取り付けたりした場合、想定よりも早期に漏れが発生するおそれがあります。
時間の節約
FKシリーズ継手を使用すると、かなりの時間を節約することができます。海上トップサイド・アプリケーション向けに中圧スキッド・パッケージを製作するケースを考えてみましょう。スキッドには316ステンレス鋼製のチューブと継手を使用し、ベテラン作業員がひとりでスキッドにある500か所の接続作業を行うとします。
どちらのタイプの継手でも、作業に要する時間は、チューブ・サイズ、材質、取り付け担当者のスキル・レベルによって変わります。
FKシリーズ継手の取り付けに要する時間は、1個あたり4分というのが妥当なところです。コーン&スレッド継手の場合は、その5倍にあたる20分かかります。
スキッドにおける500か所の接続作業を終えるのに必要な時間は、FKシリーズ継手の場合は約33.3時間、コーン&スレッド継手の場合は166.7時間となります。
材料選定に関する留意点
金属原子が流体によって酸化すると腐食し、金属表面が損耗していきます。 損耗により部品の肉厚が失われると、機械の不具合が発生する確率も高まります。オイル/ガス・プラットフォームは、常に腐食の懸念がある過酷な環境でオペレーションを行っているため、あらゆる重要部品の材料選定が重要になります。腐食の問題から資産を保護するべく、FKシリーズ継手には合金2507、合金625、316ステンレス鋼など数種類の材質オプションをご用意しています。
合金2507は、特に高塩化物アプリケーションにおいて優れた耐食性を有しているため、海洋プラットフォームにおける問題を防止することができます。ニッケル、モリブデン、クロム、窒素、マンガンを含有することで、全面腐食、孔食、すき間腐食、応力腐食割れ(SCC)に対する極めて高い耐性を発揮し、同時に溶接性を維持しています。
さらに、合金2507は高い耐力と引張強さを有しているため、使用圧力が高くなっているほか、薄肉チューブをFKシリーズ継手に取り付けても高い使用圧力に対応できるため、大きい流体流量にも対応します。
コスト効率が良くニーズに適した材料の組み合わせを選定する際は、スウェージロックの材料科学専門スタッフにご相談ください。スウェージロックは、1947年に創業して以来、腐食に対処してきました。腐食につながる要因や腐食に強い材料特性に関する知識を活かし、材料選定の簡素化をサポートいたします。
腐食のタイプを理解する
海上プラットフォームに見られる腐食には、いくつかのタイプが存在します。それぞれの腐食タイプの主な特徴と、その特定方法を紹介します。
全面腐食
最も一般的なタイプの腐食であり、容易に特定することができます。全面腐食は、金属表面にほぼ均一に生じます。大惨事につながるケースは非常にまれなものの、部品の肉厚が徐々に減っていくため、最高使用圧力を算出する際は注意が必要です。
孔食(局部腐食)
孔食では、材料表面に小さな空洞(くぼみ)が生じます。 目視検査をしっかり行うことで発見できるものの、時にはくぼみが深くなってチューブに穴が開いてしまうことがあります。 孔食は、高温かつ塩化物濃度が高い環境で発生する確率が高くなります。
すき間腐食(局部腐食)
一般的な流体システムでは、チューブとチューブ・サポートの間、チューブとチューブ・クランプの間、隣接するチューブ配管の間、表面にたまったほこりや付着物の下などに、すき間が存在します。すき間なくチューブを取り付けることは現実的には不可能です。なお、すき間を狭めすぎると、腐食が発生する最大の要因となります。
応力腐食割れ(SCC)
SCCは、合金の耐力より低い応力下であっても部品が破壊することがあり、非常に危険です。塩化物イオンが存在すると、オーステナイト系ステンレス鋼に応力腐食割れが生じるおそれがあります。 引張応力が最も高い割れの先端部で材料とイオンが反応すると、割れは簡単に拡大します。割れの進行を発見するのは難しく、深刻な不具合が突然表面化することも珍しくありません。
今日のオイル/ガス・アプリケーション向けの強力な選択肢
今日のアップストリーム・オイル/ガス・オペレーターが直面する課題は、過酷なアプリケーションでも高レベルのパフォーマンスを発揮する高い品質と信頼性を備えた部品が必要であることを示しています。初期建設や試運転から日々のオペレーションやメンテナンスに至るまで、ライフ・サイクル全体のコスト削減が重視されています。
Swagelok FKシリーズ継手を使用し、漏れを削減してメンテナンス・コストの削減、生産のスピードアップ、環境への影響の軽減を図ることで、オペレーションの全体的な安全性の向上を実現することができます。FKシリーズ継手はその優れた設計、シンプルな取り付け工程、高性能な合金の採用によって、今日のアップストリーム・オイル/ガス産業の過酷な環境における最適な選択肢となっています。さらに、FKシリーズ継手は、専門的なトレーニング、現場での評価、設計/取り付けといったサービスと共にお届けしています。
スウェージロックのオイル/ガスの専門スタッフが、新規プロジェクトでFKシリーズ継手を使用する利点について、詳しく説明いたします。FKシリーズ継手を使用して、取り付け作業の効率化、アプリケーションの信頼性向上を図る方法についてお問い合わせください。