「Ask Swagelok」を振り返る
2024年を振り返る:「Ask Swagelok」の開設
今年スウェージロックは、動画ライブラリー「Ask Swagelok」を新たに開設しました。「Ask Swagelok」では、スウェージロックの専門スタッフがさまざまな質問に答え、流体システム設計に関する知見を提供しています。今年は、5つのテーマについて専門スタッフとの対談動画を公開し、さまざまなトピックを取り上げました:
液体サンプリング
スウェージロックの流体サンプリング専門スタッフであるマット・ディクソンが、アウテージ・チューブ(ディップ・チューブ)の役割、ベーパー・スペース(気化スペース)が適切に圧縮されなかった場合にボンベ内部の熱膨張率によってボンベが破裂するしくみ、試料採取用ボンベの充填方法、サンプリング・システムの設計がベーパー・スペースに与える影響など、液体サンプリングに関してあまり知られていない側面について説明します。
対談のハイライト:
- 液体を充填した金属製ボンベが破裂して大惨事につながるリスクを最小限に抑えるため、常にベーパー・スペースを確保すべき理由
- 液体が試料採取用ボンベに充填されるしくみと、リターン圧力などの見落とされがちな要因がベーパー・スペースに与える影響
- ベーパー・スペースの圧縮とは何か、またそれを説明するには供給圧力、リターン圧力、サンプリング手順を理解する必要があること
- 二次側の部品によって背圧が高くなるしくみとそれがベーパー・スペースに与える予想外の影響、そしてベーパー・スペースのサイズを最大化する方法
- サンプリング手順がベーパー・スペースに与える影響、供給バルブおよびリターン・バルブの両方を同時に閉状態にすることで問題が生じる可能性を最小限に抑える
水素流体システムの設計
水素流体システムの設計は、オイル/ガス施設向けの設計とは大きく異なります。この対談動画では、スウェージロックのクリーン・エネルギー・グローバル技術主幹であるチャック・ヘイズがその理由と、水素の分子が極めて小さいことから配管のサイズから材質の選定までのあらゆる側面に与える影響について説明します 。
対談のハイライト:
- オイル/ガス・システムと水素システムとの規模の違いと、オイル/ガス・システムで使用される大口径パイプよりも小口径チューブの方が水素システムに適している理由
- 水素の分子サイズは小さいためオイル/ガスなら漏れないシステムであっても水素は漏れる可能性があるため、シール性に優れた密閉構造を持つ部品を接続する際は、コーン&スレッド継手よりもSwagelokチューブ継手の方が適している理由
- 圧縮された水素の密度変化によって、圧力降下や流速の予測が困難であること、そしてそれが配管の大口径化では良い解決策ではない理由
- オイル/ガス用部品の調達において試行錯誤を重ねたコスト削減方法であっても、1%を超える漏れが安全上の大きなリスクをもたらす水素システムにはふさわしくない理由
水素ぜい性
水素ぜい性は以前から知られている問題ですが、急成長とともに絶えず変化する水素エネルギー分野に関わる多くの人には理解しづらいかもしれません。この対談動画では、スウェージロック冶金上級研究員のバディ・ダムと新製品開発上級研究員のカル・ブラウンが、水素ぜい性とは何か、部品はどのような影響を受けるのか、そのために何ができるのかを説明します。
対談のハイライト:
- 水素ぜい性とは何か、それが金属材料においてどのように生じ、延性を低下させ、金属疲労と破壊を起こしやすくするのか
- 水素ぜい性が大きな問題になる場合もあれば、問題にならない場合もある理由、そして、応力、水素環境、材料の種類という三要素の知識が水素ぜい性に対処するのにどのように役立つか
- 相対絞り試験や応力解析によって材料を適切に選定し、部品に不具合を引き起こす可能性のある損傷が緩やかに蓄積するのをどのように軽減するのか
- 有限要素法解析(FEA)や物理的な製品試験(加速衝撃試験やサイクル試験など)が水素用の最適な製品設計にどう役立つのか
海洋腐食
腐食(内面腐食および外面腐食)は、海洋石油/ガス環境において最も対処が難しい課題と言えるかもしれません。この対談動画では、スウェージロック冶金上級研究員のバディ・ダムが、腐食について注意すべき点と腐食の軽減策について説明します。
対談のハイライト:
- 電気化学反応によって金属に酸化還元反応が生じ、肉厚の減少、耐圧性能の低下、孔食、割れ、すき間腐食につながるしくみ
- 海洋アプリケーションにおいて2つのタイプの腐食(環境による外面腐食および炭化水素の抽出による内面腐食)が相まって問題が生じるしくみと、NACE MRO 175規格またはISO 15156規格への準拠が役立つ理由
- 厚肉の部品や被膜によって均一腐食を軽減する、同様の腐食感受性を持つ材料によってガルバニック腐食に対処する、クロム含有量が多いステンレス鋼によって孔食やすき間腐食に対処する、ニッケル含有量を増やすことで応力腐食割れを防止する、適切に設計された配管によってフレッチング腐食や抵抗疲労を低減する
クリーン・エネルギー認証
世界にはさまざまな規格があるため、どの規格が適用され、どの規格が重要なのかを設計者が判断するのは必ずしも容易ではありません。この対談動画では、スウェージロックのクリーン・エネルギー・グローバル技術主幹であるチャック・ヘイズが、クリーン・エネルギー認証の裏と表、圧力クラスとは何か、どのようなリソースが利用可能かを説明します。
対談のハイライト:
- 水素および圧縮天然ガスに関する世界中の規格の種類、各種システムに対するそれぞれの要件、および動向
- 公称使用圧力クラスとは何か(圧縮天然ガスの場合は1つ、水素の場合は2つ)、ジュール・トムソン効果とは何か、より高圧の部品が必要な理由、水素ガス・ステーションで使用する部品はさらに高い圧力基準を満たすことが求められる理由
- 認証レター、第三者によるテスト・レポート、証明書の入手先、そしてクリーン・エネルギーのトレーニングを受けた50名のフィールド・エンジニアの専門知識を得て、設計上の問題への対処や現地の規格への準拠をサポートしてもらう方法
近日公開予定:漏れの軽減
近日中に公開予定の対談動画では、漏れを軽減してシステム寿命の延長や生産性の維持を図る方法を探ります。
上記動画および今後公開予定の「 Ask Swagelok 」動画は、こちら でご覧いただけます。
今後も「Ask Swagelok」を通じて、専門スタッフの知見をお届けしていく予定です。どうぞご期待ください。取り上げてほしいテーマがございましたら、ぜひお知らせください。スウェージロックが培ってきた専門技術や知識が皆さまのお役に立てば幸いです。