誤解を打破する:水素自動車および水素充填における経済性
誤解を打破する:水素自動車および水素充填における経済性
Chuck Hayes、クリーン・エネルギー担当主席アプリケーション・エンジニア、スウェージロック
水素燃料電池自動車および水素充填に関連した市場が成長していることは間違いありません。しかし、この技術が注目されるにつれて、誤った情報が広まっている可能性があります。水素の場合、誤解を生んでいるポイントとして、その安全性、モビリティ分野での燃料としての可能性、コスト、環境への影響などが挙げられます。
水素は、安全性、信頼性、費用対効果、環境適合性に優れていることから、現代の自動車燃料のニーズを満たす可能性を秘めています。 そして、地球環境にとって優しく、持続可能な未来を実現することに世界が注力する中、水素は世界経済にとって正しく、最良の道筋となり得ます。
本コラム記事では、水素に関する4つの誤解と、燃料源としての水素の可能性について紹介します。
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誤解:水素ガスは危険で、使用や貯蔵が難しい
水素は無毒かつ低揮発性であるため、他の燃料と同等かそれ以下の危険性しかありません。さらに、水素自動車や水素充填インフラの設計段階において、安全かつ信頼性の高いパフォーマンスを実現するべく、さまざまな安全手順やプロトコルが検討されています。そして、水素充填技術は、適切に取り扱うことで、現代のモビリティ・ニーズに対して効率的かつ経済的なソリューションを提供します。
事実:水素は空気より14倍軽く、ガソリン蒸気より57倍軽い。漏れると急速に上昇・拡散するため、地上での引火の危険性が大幅に低減する。
相対的な蒸気密度
事実:水素は、従来の燃料とは異なり、無毒である。化石燃料のように、水素が漏れたりこぼれたりしても、環境を汚染したり、人間や野生動物の健康を脅かしたりすることはない。
事実:水素の炎の周りの空気は、ガソリンの炎の周りほど熱くない。したがって、二次的な火災のリスクは低い。
事実:水素は酸素濃度が18%~59%で爆発するのに対し、ガソリンは酸素濃度が1%~3%で爆発する可能性がある。一方、ガソリンの自己発火温度は280°Cで、水素(535°C)の半分である。
事実:加圧ガス貯蔵タンクを備えた自動車は、新しいものではない。数十年にわたって水素を製造し移送してきた数十億ドル規模の産業が世界中に存在する。
事実:水素充填ディスペンサーは、充填プロセス(開始時点、中間点、終了時点)において、ディスペンサー装置および車両の両方に対して、複数の安全確認プロセスを実行することになっている。
事実:モビリティ分野向け燃料としての水素の安全性を審査する国際的な認証プログラムが複数存在する。例えば、トヨタ自動車は日本の経済産業省から燃料電池自動車(FCEV)用の水素タンクの自主検査および製造に関する認可を受けている。
事実:22か国において国別の水素ステーション・コードが開発されている。その中には、CSA(カナダ規格)、ISO(国際標準化機構)、EN(欧州規格)などが含まれる。
誤解:水素自動車は長距離移動手段として実用的ではない
航続距離の問題は、輸送用充填技術に共通する懸念事項であるものの、水素に関しては、それはあてはまりません。
水素は、エネルギー密度を高く保つことが可能なため、特に大型車のアプリケーションに適しています。また、質量が軽いことから、大型トラックの積載量を最大化することができるため、航続距離を伸ばすことができます。さらに、水素自動車は高速充填が可能なため、車両や設備のダウンタイムを減らすことができます。水素自動車は数分で充填が完了するのに対し、バッテリーの充電には数時間を要します。また、風力、太陽光、水力によるグリーン水素発電は、貯蔵技術が向上したことで、天候に左右されることなく、クリーンなエネルギーを供給し続けることができます。
水素燃料電池自動車
航続距離:320~400 km(0.3 MPaの場合)
640~800 km(70 MPaの場合)
充填時間:3~4分
電気自動車
航続距離:160~500 km
ガソリン車
航続距離:480~640 km
充填時間:2~3分
事実:水素はエネルギー密度を高く保つことができるため、炭素系燃料に匹敵する航続距離を実現できる。加圧下では、炭素系燃料と同じように効率的に貯蔵・流通させることが可能である。
事実:水素は宇宙で最も豊富な元素であるが、水や有機化合物から取り出す必要がある。ディーゼルやガソリンは原油の精製および洗浄が必要だが、この工程においても水素を使用することがある。
事実:現在、水素の主な供給源となるのは、天然ガスからの抽出である(これはすでに数十億ドル規模の世界的な産業となっている)。
事実:その他の水素供給源としては、太陽光、風力、バイオガスなどの自然エネルギーが挙げられる。これらのエネルギー源は、電気分解(電気を用いて水を有用な水素と酸素に分離するプロセス)の動力源となる。
事実:水素充填装置は、既存の供給インフラに追加することができ、ガソリンやディーゼルと同等の時間で供給することが可能である。
誤解:水素は非常に高価である
現在も従来の燃料の方が安価であるものの、グリーン水素の価格は下がり続けています。この価格低下は今後10年間で加速し、水素は他のモビリティ分野向け燃料と同等の価格になると予想されています。また、CO2排出規制の強化に伴い、政府の支援を受けて、水素の普及が加速していくことが期待されます。さらに、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)のコストと効率は向上し続けており、この傾向は水素燃料のコストにも及ぶと予測されています。
事実:米国エネルギー省(DOE)が立ち上げた アースショット・プログラムをはじめとする政府の主要な取り組みは、クリーン・エネルギーの開発を促進し、水素コストを引き下げることを目指している。
事実:高品質の燃料システム部品を使用することで、予期せぬメンテナンスの発生とコストを削減することが可能である。
誤解:水素は環境に優しくない、または持続可能ではない
水素の持続可能性に関する懸念の多くは、その製造方法に端を発しています。しかし、水素を生成する方法は複数存在し、その大半は化石燃料よりも環境に優しいのです。また、燃料電池で水素を使用した場合、自動車から排出されるものは水のみで、地球温暖化ガスの発生を大幅に削減することができます。
事実:燃料電池で水素を使用しても煙や廃棄物は出ず、生成されるのはエネルギーおよび純水のみである。
事実:水素を製造するプロセスは複数存在し、その大半でCO2排出量を削減している。
グレー水素
ブルー水素
グリーン水素
(最終目標)
事実:炭素回収技術により、炭素を分離して永久に貯留する(あるいは工業用に利用する)ことが可能である
事実:DOEが立ち上げたアースショット・プログラムをはじめとする政府の取り組みによって、長期的な成長の支援および促進が期待される。
水素は、既知の輸送経済を塗り替える可能性を秘めています。持続可能性が世界的な優先事項となりつつある中、水素は輸送用として最も現実的なエネルギー・ソリューションです。そして水素を継続的に採用していくための鍵を握っているのが、OEMなどの利害関係者が現在信頼し、今後何年にもわたって頼りにすることが可能な、安全かつ信頼性の高い水素自動車および充填システムです。
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