断熱ホースで半導体製造における課題を解決する
断熱ホースで半導体製造における課題を解決する
Doug Nordstrom、ホース製品担当シニア・プロダクト・マネジャー/Yoon Jiang、半導体担当リージョナル・マーケット・マネジャー
半導体デバイス製造の世界では、特に精度と清浄度が優先されます。プロセスの安定性を確保するには、チャンバー内の温度を最適なレベルに維持する必要がありますが、これが難しいのは、プロセス・ガスの適切な流れを維持する際に、非常に高い熱が必要になるためです。同時に、精巧なデバイス製造プロセスにおいてスループットを最大化させるには、チャンバー内のパーティクルは完全に排除されなければなりません。
理想的な製造環境の構築と維持には、高度なエンジニアリングと設計が求められるため、デバイス生産プロセスをサポートする「基本的な」コンポーネントの選定がおろそかになりがちです。例えば、製造業で数え切れないアプリケーションで使用されているシンプルな産業用ホースを考えてみましょう。半導体製造プロセスでは、ホースは重要な役割を果たしています。例えば、一般的に製造プロセス温度を調整するチラー用途に用いられます。
その他の半導体プロセスと同様に、適切なホースを選定して最適な生産環境を維持するには、特に考慮すべき事項があります。例えば、ホースに適した断熱材を選定することは、デバイス製造中に温度を調整するだけでなく、オペレーション中の不必要なリスクやコストを回避するためにも、非常に重要です。
今回は、断熱ホース・ソリューションを評価してコストと結果を最適化する際に、考慮すべきポイントを紹介します:
最適な流体温度の制御を維持する: 蒸着チャンバー温度の安定性は、効率的な半導体生産には欠かせません。蒸着チャンバーの温度は、チラーで調節するのが一般的です。チラーは、1本または複数のホースを介してポンプで送り出された冷却剤(熱媒体)を使用しますが、ホースが適切に断熱されていない場合、温度制御が期待通りに行えないかも知れません。
流体の温度は、チラーからプロセス環境へ移送される間に、自然に上昇します。もしホースに適切な断熱材が取り付けられておらず、かつチラーが冷却ライン内の温度上昇を補正できない場合、チャンバー内は適切な温度に保たれないでしょう。
一般的な産業用アプリケーションでは冷却剤に水を使用する一方、半導体アプリケーションではグリコール系、フッ素系などの冷却剤を使用することが多く、温度が-40℃に達することもあります。これはエネルギー管理を伴うプロセスであり、極低温流体を移送するラインの温度管理を適切に行うためには、一般的な産業用ホースではなく、断熱性能を備えたホースを用いる事が適しています。デバイス製造プロセスからの高品質なアウトプットを維持し、エネルギー・コストを最小限に抑えるべく、できるだけ効率的に適切な温度を維持することが、半導体メーカーにとっては得策であると言えます。
結露対策: 断熱が不十分なホースは、暑い日には氷水を入れたグラスのような状態になります。ホースの表面温度が周囲の露点を下回ると、ホースの外側に結露が発生します。また、2本の低温のホースの取り付け間隔が近い場合にも結露が発生し、断熱されている場合に比べて両方のホース表面の温度が下がることがあります。
大半の産業用アプリケーションと同様、半導体メーカーにとって結露は問題となります。ホースが狭い場所(床下など)を通っている場合、結露による滴下を検知できないと、近くの精密機器(電子機器など)の不具合を生じさせるばかりか、プロセスのダウンタイムの原因となるおそれがあります。人が頻繁に出入りするエリアでは、結露の滴が付いたパイプやホースは、スリップ事故の原因となるおそれもあります。
さらに、生産現場周辺で水溜まりが発生した場合、原因の調査が必要になることがあり、不要なダウンタイムやリソースの割り当てにつながる可能性があります。適切な断熱性を備えたホースを選定することで、結露やそれに関連した問題を防ぐことができます。
断熱ホースに何を求めるべきか: チラー・アプリケーション用の断熱ホースを選定する場合、低温用の材料を選定しましょう。どの材料がアプリケーションに最適なのか、その根拠を理解しているホースのサプライヤーを探し、最終的な使用環境で最適な性能を発揮する断熱ホースを選定してください。
また、断熱材を使用しても、ホースの最適なレイアウトや取り付けに必要な柔軟性が失われないことも重要です。 熱伝導性が低い断熱材を取り付けたホース など、移送中の流体の目標温度を適切に維持し、柔軟性があり、あまりかさばることのないオプションを探しましょう。
最後に、アプリケーションを真に効率化する断熱ホースは、必要最低限の断熱材を使用しています。優れたホースのサプライヤーであれば、画一的なアプローチではなく、アプリケーションの温度要件を満たし、かつ費用対効果に優れた断熱オプションを提供することが可能です。アプリケーションのパラメーターに基づいて、特定のホースのニーズに合った断熱材の量を数式ではじき出すことができるサプライヤーが見つかればベストと言えるでしょう。
スマートかつ費用対効果の高いソリューション: 半導体製造においてコスト削減を検討する際は、設備全体の改善を図るため、プロセスの中心にある高価な製造ツールも重要ですが、費用対効果が高く設備全体最適を図れる箇所に着目してはいかがでしょうか。低温流体移送用ホースを評価し、適切なホース断熱オプションを選定することで、大きな効果が見込める可能性があります。
何から着手すればよいかわからない場合は、スウェージロックにご相談ください。お客さまと協力しながらニーズを満たすべく、要件に合わせて調整可能な 断熱ホースのオプション を提供することも、オペレーションの効率化を実現するべく 現場でアドバイス させていただくことも可能です。ぜひお客さまのニーズを最寄りのスウェージロック指定販売会社 までお寄せください。お客さまのアプリケーションに最適なソリューションを提案いたします。
関連コラム
従業員の教育と権限付与が精製所の安全性を左右する
精製所では、有害ガスの漏れに常に注意する必要があります。有害ガスが漏れ出すことがないよう安全に閉じ込めるには、チームの知識を強化すると同時に、必要な権限を付与することも大切です。
アナライザー・シェルターに関する5つの留意点
アナライザー・シェルターは、精油所などのオイル/ガス施設において重要な役割を担っています。今回は、流体システム/サンプリング・システムに関する留意点を紹介します。
作業に適したツールを選ぶ:プラント装置に関する考慮事項
プラントで取り揃えておくべきツールにはどのようなものがあるでしょうか?高性能な円周溶接機(オービタル・ウェルディング・システム)から簡易なチューブ・バリ取り用ツールまで、接続部のタイプに応じて必要なツールを常備しておくことで、コスト以上のメリットを得ることができます。