サンプルは、プロセスの状態を正しく表していること
正確な分析を行えるかは、プロセスの状態を正しく表すサンプルを採取できるかによって決まるといっても過言ではありません。このレベルの精度を達成するには、まずプロセス・チューブやパイプからサンプルを適切に採取する必要があります。
大半のシステムでは、プローブを使ってプロセス・ラインの中央1/3からサンプルを採取するのがベストとされています。プローブは一般的に金属製で、サンプル取出し口の位置にあるノズルに挿入します。プローブはプロセス流体中に挿入され、サンプル流体をプローブの先端部から取り込むことで、連続した流れから分析するためのサンプルを採取することができます。
図をご覧ください。プローブはフィルターとして機能するため、採取したサンプル中のパーティクル、配管のさび、液滴を除去することができます。使用条件やプロセス流体に含まれるパーティクルの量にもよりますが、プローブのフィルタリング機能によって、フィルターの寿命が延びるため、大幅なコスト削減につながります。
プローブのフィルタリング特性は、プロセス流体と共に流れるパーティクルの慣性によるものです。プロセス流体中のパーティクルは、プロセス流体と共に下流に向かって移動し、急に流れの方向を変えて、プローブの先端部から取り込まれることはありません。フィルタリングによる分離が効果的に行われるのは、パーティクルがプロセス流体よりも重い、または密度が大きい場合です。プロセス配管の中心部からサンプルを採取し、汚染物質を取出し口でフィルタリングすることで、プローブを使用するとノズルで採取するよりもプロセスの状態を正しく表す(代表性のある)サンプルを採取できます。
ただし、プローブを使用することが、グラブ・サンプリングにおいて必ずしも理想的であるとは限りません。例えば、プロセス流体にパーティクルが含まれていない場合、プローブのフィルタリング機能はほとんど意味を成しません。コストを重視する場合は、プローブを使用しない方が良い場合もあります。さらに、サンプルからパーティクルや液体を取り除くと代表性がなくなる場合もあります。
タイムリーなサンプルであること
サンプリングを適切に行うには、サンプルが採取されたタイミングを把握しておく必要があります。サンプルが採取されてプロセス・ラインからサンプル容器に移送されるのにかかる時間を最短にし、外部要因がサンプルに影響を与える機会を減らすことが重要です。プローブを使用することで、移送時間を最短にできるというメリットも得られます。流速が最も速いプロセス・ラインの中心部からサンプルを採取することで、応答時間を短縮することができます。次に、高品質の容器を使用することで、サンプルの状態を保持することができます。しかし、高品質な容器であっても、正確な温度レベルを長時間にわたって維持することはできません。こういった点が懸念される場合は、オンライン分析を検討することをお勧めします。
一般的に、オンライン分析器を使用する利点のひとつには、サンプルの状態をリアルタイムで分析できる点が挙げられます。大半の場合、メインのプロセスから採取して分析するまでに1分もかかりません。これは、システム流体が非常にデリケートで、プロセスから採取されるとすぐに相が変化するといった場合には好都合です。グラブ・サンプリング用途では、パネルから採取したサンプルを分析室に移送して分析を行うのにかなりの時間を要することがあります。プロセスの状態がすぐに変化する場合は、オンライン分析器の方が適していることもあります。オンライン分析器を使用すると、分析結果に基づき、必要に応じてプロセス管理をすぐに変更することができます。プロセス流体が変化するスピードが緩やかで、急いで制御する必要がない場合は、グラブ・サンプリングが理想的と言えます。
サンプルに不純物が混じっていないこと
サンプルのコンタミネーションを防止することは重要です。不要なパーティクルが含まれていると、分析室での分析が不正確になったり、プロセスの状態を正しく表していなかったりするおそれがあります。サンプリング・システムを適切に設計することで、サンプルの純度を向上させることが可能です。設計時には、以下の点を考慮してください:
たまり部を排除すること
例えば、サンプリング場所を決める際は、サンプリング場所の上流側にたまり部が発生しないように設計してください。たまり部とは、古いサンプルがたまるスペースのことで、ティー、圧力計、温度計などが存在するエリアで発生する可能性があります。たまっていた古いサンプルが新しいサンプルに混じると、精度が低下しかねません。
たまり部の挙動は予測できませんが、一般的には、直径に対する長さの比率が大きくなると問題も大きくなると考えられています。また、分析ラインの流量が少ないと、たまり部がサンプルに与える影響の度合いが大きくなります。このような理由から、コンタミネーションが発生する可能性を最小限に抑えるには、たまり部をサンプリング・ボトルやボンベの下流側に移動させることが最善策といえます。
十分な洗浄が行えること
移送ラインやサンプリング・システムにたまった古いサンプルを洗浄してから、サンプルを採取してください。定期的に移送ラインを洗浄することで、クリーンな状態を維持することができるため、サンプルのコンタミネーションが発生する可能性が低減します。また、連続循環によって、洗浄時間を短縮することもできます。
効率的なパージが行えること
使用するたびにサンプリング・パネルを完全にパージすることで、残留物が次のサンプルに悪影響を及ぼす可能性を減らすことができます。そのため、サンプリング・システムには、パージ・ラインを追加するオプションを設けるか、十分な流量を供給して古いサンプルを完全にパージするために、ベント・システムや廃棄システムに流すことが重要です。また、業界標準では、再使用前に試料採取用ボンベを洗浄・乾燥させて、古いサンプルのパーティクルによる汚染が生じる可能性を減らすことが推奨されています。
サンプルは適切な容器に入れて保管すること
適切なサンプリングには、サンプルを適切に保管すること(サンプリング容器の選定、サンプルの採取方法や取り扱い方法を含む)が非常に重要です。
サンプル容器の種類は、サンプルの成分組成および挙動によって決まります。圧力や温度が大きく変化すると、サンプルの成分組成が変化するといった影響を受ける場合があります。以下の点を考慮してください:
- 温度が上昇する、または圧力が低下すると、軽い成分は重い成分よりも先に 液体サンプル中で気化 します
- 温度が低下する、または圧力が上昇すると、重い成分は軽い成分よりも先にガス・サンプル中で凝縮します
このような相変化が生じると、サンプルの成分組成が変化し、実際のプロセスの状態を正しく表すことができなくなります。可能な限りサンプルをプロセスから取り出した状態で維持することが重要であり、適切な容器を選定できるかがその鍵を握っています。
ボトル(一般的にガラス製、場合によってはポリエチレン製)は、 不揮発性の液体 や、周辺温度における最大蒸気圧が100 kPa(14.7 psi)の液体に適しています。ボトルは耐圧容器ではないため、気化を防止するために一定の圧力に維持する必要があるプロセス流体には適していません。ただし、ボトルは費用対効果が高いため、耐圧の必要がない場合は、ボトルを使用することは効果的です。
揮発性の液体やガスのサンプリングには、ボンベ を使用してください。ボンベは、サンプルを必要な圧力に長い時間保つことができるため、サンプリング・ポイントから分析室までボンベを移送する間も、サンプルの代表性を維持することができます。また、毒性があるサンプルの場合も、使用者への暴露やリスクを最小限に抑えることができるため、ボンベが適しています。
ボンベを使用する際は、材質とシステム流体との適合性を考慮してください。一般産業用途にはSUS316ステンレス鋼が適していますが、特に反応性の高い化学物質のサンプリングを行う場合は、より高性能な合金が必要になる場合もあります。
サンプルは適切に取り扱うこと
グラブ・サンプリングは、本質的に手作業のプロセスです。採取ポイントから分析室までサンプルを移送する際は、確立されたベスト・プラクティスに従ってください。グラブ・サンプリング・システムの設計自体が優れていたとしても、人為的なミスがあると汚染が生じ、さらにはオペレーターが負傷するといった事故にもつながりかねません。
高圧の場所から液体をサンプリングすると、プロセス流体があふれ出したり、飛散したりする場合があります。これはサンプルが無駄になるばかりか、オペレーターにとっても重大な安全上のリスクとなる可能性があるため、注意が必要です。また、環境規制に抵触するおそれもあります。
開口ボトルに液体サンプルを入れて分析室に移送すると、漏出のリスクがあるだけでなく、必然的にサンプルの正確さが低下することになります。液体サンプル中に含まれる沸点の低い成分は、適切な圧力と温度を維持しないと、沸点を上回って気化したり、分留したりします。また、開口ボトルで持ち運ぶと、オペレーターが危険なヒュームにさらされるおそれがあります。
オペレーターに適切なトレーニングを実施することで、基本知識を習得させることができます。すべてのサンプリング・ポイントにおいて、確立されたベスト・プラクティスに従ってください。
サンプリング・システムに求められるもの
グラブ・サンプリングでは、プロセスの状態を効率的にモニタリングすることができます。しかし、人為的なミスを完全に防ぐことは難しいため、グラブ・サンプリング・パネルやグラブ・サンプリング・システムに、リスクの最小化、操作性の改善、安全性の向上につながる機能を取り入れると良いでしょう。
用途によっては、以下のような設計特性がすべて必要になるわけではありませんが、適切な場合には大きなメリットが得られます。
プロセスに合わせた設計
ガスや揮発性液体のサンプリングには、液体のサンプリングにはない独自の考慮事項があるため、当該のプロセスに特化した設計のシステムを設置することをお勧めします。
例えば、圧力が高いプロセスからサンプルを取り出し、差圧を利用して、圧力が低い方(例:ポンプの上流など)へ戻すクローズド・ループのサンプリング・システムは、ガスや揮発性液体のサンプリングに適しています。耐久性に優れた耐圧性のある金属製ボンベにサンプルを充填することで、漏れが生じることなく、オペレーターを保護することができます。一方で、大気圧下で保管してもプロセス流体が気化するリスクがない場合は、サンプリング・システムで、非耐圧ボトル(自己シール・タイプのセプタム・キャップ付き)に液体サンプルを採取することができます。
優れた設計のグラブ・サンプリング・パネルは使いやすく、ミスの可能性が低減します。例えば、ガス・サンプリング用に設計したグラブ・サンプリング・パネルなら、適切なボンベの向きを維持し、常にボンベ上部から下向きにサンプルを確実に採取することが可能です。
ギア付きバルブ・アセンブリー
サンプルの採取、ベント、洗浄、パージは、グラブ・サンプリング・システム内の一連のバルブを操作して行います。従来、プロセスの状態を正しく表すサンプルを適切に採取するには、個々のバルブを適切な順序で作動させる必要がありました。
今日では、ギア付きバルブ・アセンブリーを使用して個々のバルブを適切な順序で作動させることができるため、パネルを流れる流体を容易に制御して容器に採取することができます。つまり誤った順序でバルブが作動することがないため、ミスが低減し、クロス・コンタミの可能性を抑えることができます。
連続循環機能
連続循環設計を採用したサンプリング・システムには、サンプル移送ラインが長い場合に、洗浄回数を削減できるという利点があります。さらに、プロセスの状態を維持し、移送ラインをフレッシュな状態に保つことができるため、すぐにサンプルを採取することが可能です。また、連続循環させると、高粘度のサンプルであっても移送ラインで凝固することがありません。
定量機能
定量サンプリングでは、一定量の液体をあらかじめ計量してからサンプリング・ボトルに採取することで、過充填を防止します。これでオペレーターの安全性向上と無駄の削減を実現することができます。
統合ドキュメンテーション
グラブ・サンプリング・パネルの中には、カスタマイズ可能な指示板が付いているものもあり、不慣れなオペレーターでも自信を持ってサンプルを採取することができます。サンプリング・パネルには、図面、試験記録、スペア・パーツのリストなどの書類を収納することができるため、装置のメンテナンスが必要になったときに、あてずっぽうの作業を減らすことができます。
耐食性
グラブ・サンプリング・パネルは、腐食性のある液体やガスと定期的に接することになるため、長期にわたって使用しても劣化しにくい材料を使用する必要があります。接液・接ガス部の材質にSUS316ステンレス鋼を採用することで、大半の一般的なサンプリング用途において、腐食の可能性を低減することができます。非接液・非接ガス部の材質にSUS304ステンレス鋼を採用すると、長期的な耐久性が得られます。適切な合金を選定して組み合わせることで、ベストのパフォーマンスを引き出しつつ、コストを最適化できます。
現在のグラブ・サンプリング慣行を改善するために
グラブ・サンプリング・パネルの選定を標準化すると、オペレーション全体でメリットが得られます。特に大規模な施設では、定期的にグラブ・サンプリングを行う場所が多数存在することもあるでしょう。すべてのサンプリング・ポイントにおいて標準のグラブ・サンプリング・パネル設計を採用することで、潜在的な混乱を招くことなく、すべての場所で一貫したプロセスを実現できます。
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