圧縮天然ガス(CNG)や液化天然ガス(LNG)用の継手を選定する
圧縮天然ガス(CNG)や液化天然ガス(LNG)用のチューブ継手を選定する際のポイント
Chuck Hayes、新製品開発担当主任エンジニア
世界の自動車メーカーは、厳格化が進む排ガス規制への対応策として、圧縮天然ガス(CNG)や液化天然ガス(LNG)といったクリーンな燃料にシフトする傾向にあります。
CNGやLNGが持つ大きなビジネス・チャンスを活かすには、燃料源から車両に至るまでのあらゆるレベルにおいて、高品質な燃料供給システムのソリューションを開発する必要があります。あらかじめ曲げ加工を施した チューブ を用いた燃料ライン、 バルブ、 フレキシブル・ホース、 測定機器、そして チューブ継手 といったシステムの構成部品を慎重に選定することで、安全かつ長期にわたるシステムのパフォーマンスが実現します。
CNG自動車やLNG自動車の組み立てや、その導入に欠かせない燃料補給インフラの組み立てに携わっているOEMは、これらのアプリケーションに必要な性能基準を満たす継手を選定することが求められます。そこを詳しく見ていきましょう。
漏れのないシール性能
CNGおよびLNGは、275 bar(4000 psi)を超える圧力下で保管されます。万が一、漏れが生じた場合、オペレーターが危険にさらされることになりかねません。中でも燃料補給ステーションでは、一般のユーザーが安全かつ容易に燃料補給を行えることが必要で、不具合は許されません。それには高品質の部品が不可欠となります。
過酷な環境下において漏れを防止するには、ガス漏れのないシール性能が求められます。従来の食い込みタイプや圧縮式のチューブ継手は、1個または2個のフェルールを使用したデザインを採用しており、大半の一般産業用途には適しているものの、要件が厳しい輸送アプリケーションでは不十分な場合があります。複数のポイントでガス・シールを形成する継手であれば、漏れを確実に防止でき、燃料補給ならびに車両の接続部において高レベルの安全性を実現します。
耐振性
CNG用継手やLNG用継手は、走行中の車両やパイプライン、コンプレッサー・ステーションなどで生じる継続的な振動に対する耐性が求められます。したがって、耐振性に優れた継手を採用することが極めて重要になってきます。
2個のフェルールとヒンジ・コレット機能を備えたチューブ継手は、輸送アプリケーションに求められる耐振性を備えています。バック・フェルールでチューブをグリップ、フロント・フェルールでシールするメカニカル・グリップ構造を採用することで、連続した振動にさらされても、継手からチューブが抜けることはありません。また、継手内のごくわずかな動きを許容しながらも、適切なグリップと力を維持します。「スプリング・バック」と呼ばれるこの動きによって優れた耐振性を実現しているため、車載用としても燃料補給インフラ用としても適しています。
熱性能
CNGやLNGの燃料システムには、熱力学的な課題がつきものです。例えば、CNGは、ディスペンサーから自動車の燃料タンクに注入する際の圧力に比べると、かなりの高圧下で貯蔵されています。燃料補給時にCNGの圧力が下がると、ジュール・トムソン効果によってガスの温度が急激に低下します。圧縮されたガスや液体が、車両の貯蔵タンクからエンジンに送り込まれる際にも同様の温度の低下が発生します。
システムを構成するすべての部品、中でもシステム全体に使用されているチューブ継手は、このような急激な温度変化にも耐えることが求められます。低品質の継手では、温度変化による膨張や収縮によって漏れなどの不具合が生じるおそれがあります。
耐食性
CNG/LNG自動車、そして燃料補給インフラは、腐食の原因となるさまざまな環境条件にさらされることになります。したがってOEMは、高品質な部品をCNG/LNGシステムに採用することで、腐食関連の不具合を防止することが求められます。
例えば、従来の炭素鋼は、さびが発生しやすいという特徴があります。CNGやLNGには、漏れをすぐに察知できるように付臭剤が加えられています。しかしこの付臭剤に含まれている硫黄が原因で、燃料システムに早期腐食やさびが生じることがあります。また、天然ガスは水分を含んでいることから、腐食レベルが高まり、湿度が高く温暖な気候では深刻な問題にもなりかねません。内部の腐食は一般的な保守点検において目視で発見することが難しいため、重大な安全上のリスクとなるおそれがあります。
ニッケルとクロムを多く含む高品質のステンレス鋼であれば、腐食の防止に有効です。一方、ニッケルやクロムの含有量が少ない低品質のステンレス鋼の場合は、このような腐食の問題が発生しやすくなります。
取り付けと入手性
CNG/LNGのモビリティ・ソリューションに対する需要が高まる中、OEMは信頼性の高い製品を迅速に提供できることが求められます。しかし、高品質なシステムを迅速かつ確実に構築するのは必ずしも容易なこととは限りません。CNGシステムのレイアウトは複雑で、チューブ継手の取り付けに精通していない技術者にとっては、特に困難な作業であるといえるでしょう。チューブ継手を選定する際は、簡単に取り付けられることも重要なポイントとなります。
大規模な燃料ライン製造用に設計された継手 は、既存製品よりもはるかに耐振性が高く、安定した漏れのないチューブ接続を実現します。また、大規模製造に必要なのは容易な取り付けだけではないということも忘れてはいけません。積極的な生産スケジュールを維持したいというOEMにとっては、部品の現地在庫を提供し、生産ニーズを十分に理解して対応してくれるサプライヤーの存在が欠かせません。部品を現地調達することで、需要の変動にも対応可能な在庫の確保にもつながります。
CNG/LNGアプリケーションに適した継手
CNGやLNG市場で成功を収めるには、これらの燃料システムの厳しい性能基準を満たすチューブ継手技術が必要となります。
代替燃料輸送アプリケーションの要件を満たすべく開発された製品のひとつが、 Swagelok® トルク別アセンブリー継手(AbT) です。このチューブ継手は、アドバンス・バック・フェルール構造によるヒンジ・コレット機能を備えた設計(特許取得済み)を特徴としており、トルク値による取り付けが可能で、一貫した漏れのないパフォーマンスを実現しています。さらに、AbT継手は迅速かつ容易に取り付けることができ、取り付けを繰り返しても、優れたガス・シール性能、チューブのグリップ、振動疲労に対する優れた耐久性を発揮します。
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