ALDプロセスにおける3つの課題とその解決方法
ALD/ALE半導体加工処理における課題を解決するには
高い精度が求められる 半導体ファブ の世界では、重要な流体システム部品の品質が鍵を握っていると言っても過言ではありません。例えば、原子層蒸着(ALD)や原子層エッチング(ALE)といったプロセスでは、使用するシステム部品に極めて高いクレンリネス(清浄度)が求められるものの、プロセス・ノードの微細化が進むにつれて、その維持が困難になりつつあります。また、製造プロセスの流体システムで用いられているガスの多くは危険有害性があるため、漏れのないシール性能も重要です。
このような状況から、半導体業界で使用されている流体システム部品(バルブ、継手など)の市場のコモディティ化が進んでいるように思えるかもしれません。すべての部品が上記の特性を備えていなければならないことから、どれを選んでも最終的なパフォーマンス・レベルには大した差がないと考える方も少なからずいるのではないでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。ALD半導体加工処理向けの超高純度用バルブ は、すべてが同じように作られているわけではありません。最先端のバルブの中には、半導体メーカーが抱えている課題の解決に役立つものもあります。今回は、半導体メーカーが直面している課題を3つ取り上げ、ALDプロセス・バルブをはじめとする適切な流体システム部品を選定することで、いかに課題に対処して解決するかについて検証します。
1.不安定な化学物質の取り扱い
前述したように、ALDやALEの製造プロセスで一般的に使用されているプリカーサー・ガスの大半は、不安定で危険です。バルブには、漏れの無い性能が不可欠なのは言うまでもありませんが、それ以外にも必要な特性があります。
例えば、プリカーサーを効率的に管理したり、新しいプリカーサーの使用を検討したりするには、変動が大きい圧力と温度にプロセス・バルブをさらして、再現性のあるガスの安定した流れを追求する必要があります。つまり、バルブは幅広いシステム圧力と温度範囲(最高200°C)にわたって、予測通り信頼性の高いパフォーマンスを発揮することが求められます。
加えて、ALDやALEのプロセスで使用するバルブは、最初の化学物質の投与時と同一かつ正確なパラメーターで、パージ・プロセスを実行しなければなりません。この二段階にわたるプロセスでは、プリカーサー・ガスを窒素でパージし、さらに窒素もパージする必要があります。このプロセスを迅速かつ一貫して行うことで、生産効率を維持することができます。
バルブは、幅広いシステム圧力と温度範囲(最高200°C)にわたって、信頼性の高いパフォーマンスを発揮することが求められます。
大幅な温度変化による影響を緩和し、効率的にパージを行うには、マルチポート・バルブとマルチバルブ・マニホールドを使用するとよいでしょう。どちらを選ぶかはアプリケーション次第です。大量にパージする必要がある場合は、マニホールドが適しています。ただし、新しい化学物質に固有の課題に対処するには、どちらの方が適しているとは一概には言い切れません。
2.歩留まりの最大化
今日のファブで何よりも重視されているのは、一回の生産サイクルで生産可能なデバイスの量を最大化することです。
スピードも重要ですが、さらに重要なのは一貫性と再現性です。ALDやALEのプロセスでは、数百万回の化学物質の投与が必要になることも少なくありません。専用のプロセス・バルブには、数百万を超えるサイクルにわたって、この投与を確実かつ一貫して行うことが求められます。化学物質の投与量は、プロセス・バルブの流量性能に影響されますが、それ以上に、プロセス・バルブが開いている時間(ミリ秒)に影響されます。バルブ作動のレスポンス・タイム(応答時間)にわずかでも差異があると、プロセス・チャンバーに供給される化学物質の量が予想外に変化するおそれがあります。
バルブ作動のレスポンス・タイムにわずかでも
差異があると、プロセス・チャンバーに供給される
化学物質の量が予想外に変化するおそれがあります。
一貫して優れたパフォーマンスを発揮するプロセス・バルブに求められる指標は以下の通りです:
- バルブは、プロセス温度が200°Cに達しても最適なパフォーマンスを発揮する。
プロセスによっては、プロセス・ガスの投与とパージを正確に制御するべく、バルブ全体をガス・ボックスに入れて使用できるとよい。 - バルブは、安定した大流量に対応し、生産基準に確実に適合することが求められる。この流量は正確に制御してプロセスの厳密な許容範囲内に収める必要があり、バルブのレスポンス・タイムと作動速度は、可能な限り高速である必要がある。
- バルブは、数百万回のサイクルにわたって、同レベルのパフォーマンスを発揮することが求められる。
3.総保有コストの削減
最後に、オペレーションの効率化を図る上で、半導体製造装置の総保有コストの削減は欠かせません。これを実現するには、可能な限り潜在的なダウンタイムを減らす必要があります。
危険で腐食性の高いプリカーサー・ガスを使用する場合や、温度や圧力が大きく変化する場合は、ALD/ALEシステム専用のバルブを設計・製造する必要があります。設計する際は、バルブの 構成部品とその材質 も考慮しましょう。半導体製造環境において、ステンレス鋼の成分は重要であり、高性能合金と残留成分の最適なバランスが求められます。ステンレス鋼に含まれる成分のうち、クロム、ニッケル、モリブデンの含有量を増やすと、材料の強度や耐食性を高めることができます。成分中には、一定の残留成分が含まれている必要があります。例えば、最終用途の部品の表面仕上げと溶接性を最適化するには、特定の硫黄のバランスが必要になります。そのためメーカーは、アプリケーション要件に合わせて、重要な性能属性間のバランスを取ることが求められます。
最適な材料を選定することで、部品の耐久性が向上し、メンテナンス、修理、交換などによるダウンタイムを減らすことができます。ダウンタイムが発生するたびに、コストの増大と収益の損失につながります。ALD/ALEプロセスにおいてバルブが果たす重要な役割(およびシステム全体に対するバルブのコストの低さ)を考慮すると、高性能な流体システム部品に投資することで、大きなリターンが得られると言えるでしょう。
高品質で信頼性の高いALD/ALEプロセス用のバルブを調達するには、適切なサプライヤーと協業することも重要です。サプライヤーが原子層プロセスとそれ固有の複雑さを理解し、ニーズに合ったバルブの選定をサポートできれば理想的です。スウェージロックの半導体専門スタッフには、半導体製造装置メーカーやデバイス・メーカーの製造プロセスや装置の進化をサポートしてきた豊富な実績があります。プロセスを最適化する方法について興味がございましたら、ぜひご相談ください。
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