流体システムの漏れの一般的な原因とコスト
流体システムの漏れの一般的な原因とコスト
プラントにおける流体システムの漏れは、珍しいことではありません。 しかし、プラントのメンテナンス担当者として安全性と収益性を考えるなら、ごくわずかな漏れであっても問題視すべきです。 だからこそ、漏れが発生する原因とメカニズム、漏れの発生場所を特定して検査する方法、さらに最終的にはプラント全体で漏れを削減する方法を策定することが有益といえます。
漏れのコスト
プラントで漏れが発生するのは珍しくないものの、コスト面から考えれば、迅速な措置と防止策の立案が必要なのは明らかです。
- 毎年、推定で数百万ガロンもの油圧流体が浪費されていると言われています。 油圧流体の価格は、1ガロンあたり約40米ドルです。
- 潤滑剤が失われると、装置の不具合(早期摩耗や機械の故障など)によるコスト損失につながるおそれがあります。
- 漏れの補修でプロセスを停止するごとに、プラントの生産能力が低下することになります。 このようなダウンタイム(停止時間)が、多大な利益損失につながるおそれがあります。
- 漏れが原因で装置の校正や操作が適切に行われなかった結果、仕様から外れた不良品が発生してしまう場合もあります。 不良品は手直し後に値引きして販売するか、廃棄せざるを得ないこともあります。
- オイルが漏れて床面に滴り落ちると、スリップして転倒事故につながるなど、作業環境の安全性が失われるおそれがあります。 フュージティブ・エミッション(排出物の漏れ)についても、補修に高いコストが必要になるばかりか、従業員の健康に悪影響を及ぼすおそれがあります。
- 安全規格を遵守していないシステムや装置で漏れが発生した場合、法律違反による高額の罰金が科されるおそれがあります。
- 漏れ個所の特定と補修には、時間とコストがかかります。 もし有害な化学物質が漏れた場合、専門チームに対応を依頼する必要があるかもしれません。また、点検を行うためにシステムを停止すると、さまざまなコストが伴うことになります。
漏れの一般的な3つの原因
部品の不具合が原因で漏れが生じるケースはまれだと聞くと意外に思われるでしょうか。 しかし漏れは、部品の取り付けミスや選定ミスなど、ヒューマン・エラーを原因とするケースがほとんどです。 適切な部品を選定 して正しく取り付けることで、プラントの安全性が向上し、時間とコストを大幅に削減することができます。
スウェージロックのフィールド・エンジニアは、漏れの一般的な原因として以下の3点を挙げています。プラントにおける漏れ対策を講じる際に、参考にしてください:
- 信頼性の低い金属同士のシール: 金属同士で信頼性の高いシールを形成し続けることは、特に長期間にわたる場合、至難の業です。 金属同士のシールを使用する場合は、漏れを防止するため、メーカーのガイドラインに忠実に従ってください。 バルブについては、ソフト・シート・シール付きの製品に交換した方がよい場合もあります。ガスを繰り返し締め切るケースであればなおさらです。
- チューブ継手の不適切な取り付け: チューブ継手を適切に取り付ければ、漏れの可能性を大幅に抑えることができ、プラントの安全性を高めることができます。 正しいフェルールの向き、締め付け度の確認を行うためのギャップ検査ゲージの使い方など、継手の適切な取り付け方法を習得している技術者に担当させましょう。
- 不適切なチューブの選定/取り扱い/前処理: チューブの選定や前処理を適切に行わなかった場合も、漏れの可能性が高まります。 プロセス流体または外部環境に適合しないチューブを使用すると腐食しやすく、早期破損や漏れにつながります。 さらに、切断面が不均一なチューブ、へこみやスクラッチ傷のあるチューブ、バリ取りしていないチューブも、継手のシール能力を低下させるおそれがあります。
漏れの3つのタイプ
漏れのタイプを把握しておくと、適切な是正措置を行うことができます。 スウェージロックのエンジニアによると、流体システムに一般的に見られる漏れのタイプは、以下の3種類です:
実際の漏れ: 圧力障壁がシステム流体を封止できない、または周囲環境から隔離できない場合に発生する漏れ。 材料に生じた裂け目やシール面間のすき間によって発生します。
見かけ上の漏れ: 材料のアウトガス、流体の吸収または吸着、クラックやデッド・レッグ内のたまりなどにより、システム内に閉じ込められていた流体が流体システムに放出されること。
透過: 圧力障壁には小さな分子が通過可能な大きさの穴が無いにも関わらず、流体が圧力障壁を超えて流入・通過・流出すること。
漏れ検出の方法
一般的に、漏れ試験は実際のプロセス流体または代理流体(水、空気、窒素、ヘリウムなど)のいずれかで加圧したシステムで実施します。 試験方法は、実際の装置に対して行うものと、卓上(または実験室)で行うものの2種類があります。
- 目視試験: 液体システムでは最も基本的なタイプの漏れ試験です。 流体が滴り落ちていないか、漏れで濡れている個所がないかを目視で確認します。 実際の装置に対して実施するのが一般的ですが、ホース・アセンブリーに対する目視試験は、卓上でも広く行われています。
- 発泡試験: シンプルかつ費用対効果の高い、ガス・システム用の試験です。 Snoop(スヌープ)のような薄膜界面活性剤を塗布するか、水槽に入れて泡が発生していないかを調べます。 本試験は、実際の装置と卓上の両方で広く使われています。 これは、漏れ量の測定というよりは漏れの有無を調べるための方法で、泡の観察が必要です。
- 圧力変化による漏れ試験: 本試験は、液体・ガスのいずれのシステムに対しても行うことができます。 試験対象の装置を隔離し、指定の圧力と時間で加圧します。 漏れがあると圧力が徐々に低下していくため、これを測定します。 圧力変化による漏れ試験の一般的なタイプが圧力の減衰です。 本試験は卓上で実施するのが一般的ですが、試験方法に配慮すれば、実際の装置でも実施することができます。 本試験に必要な装置はわずかで、自動化も可能です。
- 空中超音波試験: ガス・システム用の試験です。 空中超音波測定装置を使用して漏れが生じている場所を特定します。 加圧システムの場合、この試験を使用して、漏れ速度の概算値を求めることができます。 内部に音波発生装置を追加することで、加圧していないシステムにも使用することができます。 空中超音波試験は、実際の装置に使用するのが一般的です。
- 質量分析試験: ガス・システム用の試験です。 質量分析計を使用して微量のガス漏れを検出し、漏れ量を測定します。 試験では代理流体としてヘリウムを使用することが多く、その場合はヘリウム・リーク・テストと呼ばれます。 外部試験は加圧システムに、内部試験は真空システムに使用します。 本試験は、極めて微量の漏れを特定するために卓上で行うのが一般的です。
漏れの優先順位
プラント内のすべての漏れにすぐに対処することが難しい場合は、以下のように漏れを分類し、メンテナンスと補修の優先順位を付けましょう。
- 危険な漏れ: 安全上の問題がある漏れは、当然ながら最優先に対処する必要があります。 例えば、有害なガスや腐食性の化学物質の漏れに加え、スリップや転倒につながるおそれがある漏れは、どれも危険です。 こうした安全上の問題がある場合、まずリスク管理者に確認させたうえで、優秀なメンテナンス技術者を派遣し、早急に漏れを補修させましょう。
- 高コストの漏れ: プラント内のすべての漏れコストを足してみると、莫大な金額になります。 ところが、漏れの中には、たとえわずかな量でも、コスト内訳で見ると大きな割合を占めるものがあります。 例えば、高価なアルゴン・ガスのわずかな漏れを補修した方が、安価な圧縮エアーの大きな漏れを止めるよりも、圧倒的に大きなコスト削減につながる可能性があります。
- 厄介な漏れ: 最後は、危険も大きな損失ももたらさない、さほど深刻ではない漏れです。 このような優先順位が低い漏れへの対策は、メンテナンス・スタッフが他の重要な作業を終えるのを待ってから行いましょう。
エンジニアや技術者に対してトレーニング(および再トレーニング)を実施すると、漏れの特定と対処のスキルが向上することがわかっています。 トレーニングには、適切な材質の選定方法から、チューブの曲げ加工やチューブ継手の取り付け手順に関するスキルを修得するためのハンズオン・トレーニングまで、幅広い内容が含まれます。 スウェージロックでは、安全で効率的なプラント運用のための トレーニングや教育プログラム を数多く提供しています。 トレーニングを受けたメンバーがチーム一丸となって漏れの特定と阻止に注力することで、より安全でコスト効果の高いプラント運用を実現できるでしょう。
漏れの特定および対策方法に加え、ベスト・プラクティスが学べるトレーニングに関する詳細につきましては、 最寄りのスウェージロック指定販売会社 までお問い合わせください。
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