サンプリング・システムの精度を高める上での推奨事項と禁止事項
サンプリング・システムの精度を高める上での推奨事項と禁止事項
Ken Backus、フィールド・エンジニア(北米担当)
サンプリング・システムの精度向上は、経験豊富な流体システム・エンジニアや分析技術者にとっても難題ではないでしょうか。精度が低い原因を特定しようとして、推理ゲームに陥るパターンも少なくありません。そして問題の診断に時間がかかるほど、不良品などが原因で損失が膨らむおそれがあります。
より正確なサンプルが必要ですか? 今回は、プラントで正確なサンプルを入手する上での推奨事項と禁止事項を紹介します:
【推奨】 単純なシステム・エラーが無いか確認してください。プロセス・サンプリングの精度が低い原因の中には、簡単に特定可能なものもあります。 サンプリング・システムの点検を定期的に行い、単純なミス(逆止弁を取り付ける向きを間違えたためサンプルの流れがブロックされている、ファスト・ループの流れる方向が逆になっているなど)が無いか確認しましょう。
【推奨】 サンプルの流れを適切に調整してください。 サンプリングを適切に行うには、プロセス・サンプル流体を適切な流量、圧力、温度に調整し、分析に適した状態にしましょう。 この3つの条件を調整するだけで、世界中のプロセス分析担当者を悩ませている問題の大半は解決可能であるといっても過言ではありません。 一般的に、適切なサンプル混合、クリーンなサンプル・ライン、迅速な応答時間を確保するには、流速を上げることをお勧めします。
【推奨】 時間遅れの原因を究明してください。 時間遅れとは、メインのプロセス・ラインのサンプル取出し口から分析器までサンプルが移動するのにかかる時間の合計です。時間遅れが大きすぎると、正確なサンプルの入手に悪影響を及ぼすことになります。問題の兆候としては、プロセスの変化に追従しない測定結果、鈍い応答、ラボの結果との不一致、制御スキームのパフォーマンス低下が挙げられます。
時間遅れに影響を与える要因としては、サンプル・プローブの長さ、サンプル移送ラインの長さと径、そして同ラインにおける圧力(高すぎる/低すぎる)などが挙げられます。 何から着手すればいいか分からないという場合は、外部のリソースを活用して、潜在的な時間遅れの原因を洗い出すというのも【推奨】 事項のひとつです。
【推奨】 ガスの圧力を下げてください。ガスが高圧のままサンプル・ラインを通過すると、いくら設計が優れていてもサンプリング・システムが台無しになるおそれがあります。 上記のような時間遅れの原因となるばかりか、コンポーネントの不具合が生じた際の急激な圧力降下と安全面のリスクにもなります。 したがって、サンプル・ラインのサンプル・ガス量を最小限に抑えるため、できるだけ早くガスの圧力を下げることをおすすめします。
【禁止】 適合性が無い材料を選定しないでください。サンプル流体が配管などの壁面に接触して、吸着により大量の成分を失うと、正確なサンプルを入手できなくなるおそれがあります。フィルター・エレメント、レギュレーターのダイヤフラム、チューブ壁、ガス・ボンベの材料は適切なものを選定して吸着を最小限に抑え、正確なサンプルの入手に努めましょう。
また、サンプル流体との適合性が無い材料を使用すると、サンプルの漏れやサンプリング装置の詰まりといった不具合が生じるおそれがあります。 正確なサンプル分析を行うため、適合性のあるシール材料を使用してください。
【禁止】 流れのないラインからサンプルを取り出さないでください。 サンプリングは、十分な流れがあるプロセス・ラインで行わないと、正確なサンプルを取り出すことができません。 なお、サンプルの適時性は、サンプルがプロセスから取出し口に流れる時間にも左右されます。取出し口の場所は、サンプリング・システムが上手くいくか否かの鍵を握っています。
【禁止】 サンプル移送ラインに「たまり部」を放置しないでください。 移送ラインに「たまり部」または置換されていない部分が存在すると、サンプリング・システムの精度に悪影響を及ぼすおそれがあります。古いサンプルが新しいサンプル中に拡散して分析の応答が遅くなり、システムのコンタミネーションが続くことになります。
【禁止】 気化レギュレーターに液体サンプルを過剰に流さないでください。 気化器を最適な状態で機能させるには、特定の温度を維持する必要があります。サンプリング・システムの精度低下は、過熱によって生じることもありますが、過剰な液体サンプルの流れが原因で気化器が氷結して精度低下が発生するケースの方が一般的です。目安として、1分間に5 ミリリットルを超える液体サンプルを気化器に流さないようにしてください。
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