グリーン水素の製造および貯蔵をサポートする
小さな分子がもたらす大きなインパクト:エバーフュエル社が切り拓くグリーン水素の製造
水素は、エネルギーにおける次の大きなフロンティアです。水素資源は豊富で、容易に抽出することができ、燃料として使用してもCO2を排出しません。気候変動による影響に直面する世界にとって、水素はクリーンかつ効率的な動力源として大きな期待が寄せられています。
しかし、これまで水素の普及には大きな障壁がありました:
- 水素は分子が非常に小さいため、圧力で封じ込めるのは容易ではない
- 水素を製造する際は、主に化石燃料が必要になるため、水素によって得られる利点の多くが失われる
- 輸送用燃料として水素を圧縮するインフラが存在しなかった
今日、これらの課題を解決するための取り組みが行われています。その最前線に立つのが、デンマークのある革新的な企業です。
エバーフュエル社 は、スウェージロック・デンマークをはじめとする多くの企業による支援を得て、同社のCEOヤコブ・クログスガルド氏が言うところの「水素の実現」に取り組んでいます。「エバーフュエル社の使命は、実に幅広いものです。再生可能エネルギーを実現し、基本的には化石燃料を無くそうとしています。では、実際にはどうすればいいのでしょうか。工業プロセスにおいて化石燃料に代わるグリーン水素を製造し、それを水素自動車に供給するのです」とクログスガルド氏は語ります。
HySynergy PtXプロジェクトで水素の製造と貯蔵を実現
エバーフュエル社によると、この取り組みのメインとなるのが HySynergyプロジェクト です。このプロジェクトでは、グリーン水素の大規模製造および貯蔵用の20メガワットのPtX(Power to X)施設を建設するという意欲的な取り組みが行われています。オペレーションまたは水素製造の源として化石燃料に依存する多くの水素製造施設とは異なり、HySynergyは風力および太陽光を動力源としており、化石燃料に依存していません。ガスを排出することなく電力を生産する、排出ガスを出さない施設なのです。
「このプロジェクトは、20メガワットの電解槽を建設するというだけではありません」と、クログスガルド氏は語ります。「もちろん、これは第一段階にすぎません。しかし、このような施設が持続可能であるというビジネス・モデルを作ることが重要なのです。グリーン・エネルギーという面はもちろん、ビジネスの観点からもです」
「当社は、完全に再生可能な資源から水素を製造できることを示そうとしています」とクログスガルド氏は語ります。「そして、それを貯蔵して将来使用する。昨日の風を今日の燃料に変える。十分な量を貯蔵できれば、1月に吹いた風を明日の燃料に変え、4月に供給することも可能です。これは、他の再生可能エネルギーでは不可能です」
「さらに、燃料電池の水素からは、副産物として純水が発生しますが、この純水を使ってさらに水素を製造できる可能性があります」とクログスガルド氏は続けます。「水素を売ることもできますし、その水素から出る排出物を使ってさらに水素を作って売り、施設から出る廃熱を回収して売ることもできますし、出てくる酸素も売ることができます。加えて、 圧縮した水素は、バッテリーなどの代替品よりも多くのエネルギーを運ぶことができるため、非常に強力なビジネス・モデルになると考えています」
水素の封じ込めおよび圧縮
もちろん、水素の実用化、そしてHySynergy PtXプロジェクトを実現するには、可燃性の水素を圧縮し、漏れの無い環境で封じ込めることが重要です。
スウェージロック・デンマークでリージョナル・フィールド・エンジニアを務めるイェスパー・スコブニング氏は、「水素はどこであっても漏れ出てしまうものです」と語ります。「さらに、水素ぜい性 という問題もあります。特に硬鋼材では、鋼材中に水素分子が吸収されることによって亀裂が生じ、最終的には破損に至ります。 FKシリーズ継手 をはじめとするスウェージロック部品が有益なのは、こうした課題に対処できることが分かっているためです。FKシリーズ継手は水素用に設計されており、ニッケルの含有量を高めた専用のボール・バルブやニードル・バルブもあります」とスコブニング氏は語ります。中高圧用継手の中でも、FKシリーズ継手は従来のコーン&スレッド継手に比べて 容易に取り付けることができる ため、貴重な作業時間を削減し、作業効率を向上させることができます。これはどの設備においても重要なことですが、効率化を重視する設備においては特に重要でしょう。
スウェージロック・デンマークは、プロジェクト開始当初からエバーフュエル社と協力し、システム設計を支援するフィールド・エンジニアリングの専門知識や、グラブ・サンプリング・パネルなどの カスタム設計およびアセンブリー・ソリューション を提供してきました。
「このプロジェクトは、すべてが白紙の状態から始まりました」とエバーフュエル社でプロジェクト・マネジャーを務めるイェスパー・ベイルストラップ氏は語ります。「スウェージロック・デンマークのピーターや彼の同僚には、大いに助けられています。ピーター達は、スウェージロックが75年にわたって培ってきた低分子の液体およびガスの高圧貯蔵の経験や、特定の圧力でどのタイプの装置を使用するのが良いか、特に水素について色々と教えてくれました。当社はこういった分野ではわずかな知識しか持ち合わせていなかったので、スウェージロック・デンマークをかなり頼りにしていましたし、今も頼りにしています」
そして、ベイルストラップ氏によれば、この関係は重要だったということです。「スウェージロック・デンマークは非常に熱心で、プロフェッショナルなアプローチをとっています。刺激を受けていますし、最初から非常に良いフィードバックをもらっています。コミュニケーションも簡単で、お互いによく理解し合っています。だから、このプロジェクトは、将来的に多くの可能性を秘めていると思います。」
重要なのは、このプロジェクトはまだ初期段階だということです。2025年にフェーズIIが完了すると、HySynergy PtXプロジェクトは、デンマークの陸上輸送セクターから排出されるCO2の11%に相当する排出量を削減することになります。2030年のフェーズIII完了時には、デンマークのCO2排出量をさらに削減し、CO2を70%削減するという気候変動目標の達成に大きく貢献することになります。
「グリーン・エネルギーへの転換を図るために、世界中で何らかの取り組みを行うべきなのは明らかです」とスコブニング氏は語ります。「水素の製造は、そのための重要な要素です。このようなプロジェクトに参加し、その可能性を証明できたことは、私にとって大きな誇りです。正しい方向への大きな一歩なのです」
水素の製造や貯蔵のための信頼性の高いソリューションについて詳しく知りたいと思いますか?スウェージロックがお客さまの次のプロジェクトをどのようにアシストできるかにつきましては、最寄りの指定販売会社までお問い合わせください。
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