バルブの基礎知識:流体システムの担当者が知っておくべきこと
バルブの基礎知識:一般産業用バルブの基本的な機能とタイプ
産業用流体システムを意図した通り確実に機能させるには、適切な部品を用いて設計/構築する必要があります。ここで重要な役割を担っているのがバルブです。バルブを使用すると、アプリケーションのニーズに適したシステム流体の流れを効率的に制御することができます。
流体システムの設計は複雑で、さまざまなことを検討する必要があります。アプリケーションに適したバルブを選定するのは、必ずしも容易とは限りません。開閉のみが必要ですか?流れの方向を制御する必要がありますか?流量調節は必要ですか?過剰圧からシステムを保護する目的はありますか?
こういった点をクリアにすることで、流体システムに合ったバルブを選定することができます。今回のコラム記事では、さまざまなタイプの一般産業用バルブを取り上げるとともに、アプリケーションに適したバルブを選定するためのヒントを紹介します。
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安全第一
流体システムは、取り付けやオペレーションのベスト・プラクティスに従わなかった場合、危険な状況を招く可能性があります。大半の流体プロセスのオペレーションは、高い圧力と温度下で行われています。また、流体の中には有害なものもあり、万が一漏れが生じた場合、オペレーターが危険にさらされるおそれがあります。
バルブは、流体システムを安全に機能させる上で、重要な役割を担っています。例えば、安全締め切り用バルブや圧力逃がし弁を使用することで、システムが過剰圧に達してブローアウトにつながりかねない危険な状況を回避することができます。
流れを理解する
バルブの最大の役割とは、流れの制御です。流れとは、流体がシステムの中を安定的かつ連続的に移動することを意味します。液体や気体は、圧力が高い方から低い方へと流れます。通常、流量は流量計で測定し、単位時間当たりの距離または体積の比率で表します(例:1秒当たりのメートル数、1分当たりのリットル数など)。
バルブは、エンド・コネクションのサイズやバルブの流路といった要因に基づいて流れを制御します。流れを制御するバルブの性能を調べるには、メーカーが提供している流量係数(Cv値)を参照してください。Cv値が大きいほど流量が多いことを意味しますが、タイプや用途によっては、Cv値がゼロに近いバルブも存在します。
Cv値計算ツールで、システム内の圧力、流量、温度、流体に基づいて
Cv値または流量を調べることができます。
バルブの機能とタイプ
バルブには、大きく分けて5つの機能があります。以下をご覧ください。記号は、配管図や計装図(P&D)などでよく使用されている業界標準の記号です:
開閉: 基本ともいうべきバルブの機能です。開閉用バルブは流体の流れを開始または停止させるもので、以下のタイプがあります:
- ボール・バルブ
- ベローズ・シール・バルブ
- ダイヤフラム・バルブ
- プラグ・バルブ
- ゲート・バルブ
流れの制御: システムの流量を調節します。単純な調節のほか、微量流量調節に使用することも可能です。 ニードル・バルブ は、流量を制御する際に最も一般的に使用されており、必要に応じて開閉することも可能です。流量は、オリフィスのサイズ、ステムのタイプ、ステムの位置によって決まり、バルブのハンドルを回して制御します。
流れ方向に対応: 流体を希望する方向に流すことができ、システム内の流れの方向を変えることもできます。方向を制御するには、 逆止弁 やマルチポート・ボール・バルブがよく使用されています。なお、方向制御用のバルブは、流れを変える際に開閉することは可能ですが、流量を絞ることはできない点に留意してください。
過剰圧の保護: システムの圧力が規定値を超えて上昇するのを防止します。圧力逃がし弁やラプチャー・ディスクがよく使用されています。 圧力逃がし装置 は、圧力下で動作するあらゆるシステムにおいて非常に重要な役割を担っており、いわば過剰圧に対する最後の砦ともいうべき存在です。圧力逃がし弁は、あらかじめ設定した圧力レベルで自動的に開状態になるように調整することが可能です。圧力逃がし弁を使用することで、過剰圧が発生してもシステムの圧力が安定し、オペレーションを継続することができます。
過剰流出の制御: エクセス・フロー・バルブ(過流防止弁) は、システム流体の過剰流出を防止するべく、バルブを通過する流量が所定の値に達すると作動し、流体の急激な放出を阻止します。下流で流量が過剰になると、バルブのポペットが瞬時にトリップ位置または前方位置に移動し、システム流体の過剰流出を防止します。
適切な選定を行うために
流れと、それを制御するためのさまざまなタイプのバルブについて十分に理解することで、流体システムの設計において適切な選定を行うことができます。しかしながら、今回のコラム記事はあくまでも入門編にすぎません。次のステップとして、STAMPEDメソッドを用いて産業用流体システムに適したバルブを選定する方法について紹介している コラム記事 も併せてご一読ください。
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