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サンプリング・システムの時間遅れ: 4つのチェック・ポイント

試料採取システムでの遅延時間の測定

サンプリング・システムの時間遅れ: 4つのチェック・ポイント

プロセス分析サンプリング・システムでは、サンプル採取から測定値を取得するまでの間に、必ず時間遅れが発生します。

時間遅れとは、サンプルがプロセス・ラインの取出し口からプロセス分析器まで移動するのに要する時間を合計したものです。 この時間遅れは想定よりも長いことがあり、軽視するとプロセスの制御ができなくなることもあります。 1分間と想定していた時間遅れが実際には2時間かかった場合、分析器による測定値はもはやプロセスとの関連性もなく、目的に合った値ではなくなります。取出し口から分析器の測定に要する時間は、業界標準の1分以内に抑えることが望まれます(こちらのコラム記事 も併せてご覧ください)。

分析計装システムにおける時間遅れの原因はさまざまです。 時間遅れを短縮しようとする際は、まず以下のポイントをチェックしてみましょう:

  1.  プローブ
  2.  サンプル経路(フィールド・ステーション・モジュール、中継ラインなど)
  3.  サンプル調整システム(流路切り替えなど)
  4.  分析器

遅延時間の4つのエリア

1. プローブで発生する時間遅れ

適切なサンプル・プローブを使用してください。 プローブの長さは、プロセス・ラインの径の中央1/3に届けば十分です。この部分は流れが最も速いため、最もクリーンで流体の状態を正しく表しているサンプルを採取することができます。 プローブの容積が大きくなると時間遅れも長くなります。必要以上に長い、または必要以上に大きい径のプローブは使用しないでください。

また、プロセス配管における取出し口の位置についても考慮が必要です。 プロセス配管の中で流量の少ない部分にプローブを配置すると、プロセスの成分に生じた反応等による変化が分析結果に反映されるまでに時間を要します。 例えば、容積の大きなタンクやドラムは、新たな成分が流入した時に、「混合が起こる空間(ミキシング・ボリューム)」となります。この場合、古い成分を新しい成分で入れ替えるには、ミキシング・ボリュームを完全に置換する必要があります。 時間遅れを短縮するには、ミキシング・ボリュームの下流ではなく、プロセスの時間遅れの発生源(ドラム、タンク、たまり部、流れが悪いラインなど)の上流に取出し口を配置しましょう。

2. サンプル経路で発生する時間遅れ

  • サンプル取出し口の位置が離れている: 分析器までのサンプルの移動距離が長くなるほど、時間遅れも長くなります。 取出し口はできるだけ分析器の近くに配置しましょう。 中継ラインが長くなる場合は、ファスト・ループを使用して流量を増やし、時間遅れの無いサンプルを分析器に供給してください。
  • ラインの長さと径を調節する: サンプルの移動距離が長いほど、また中継ラインの内容積が大きいほど、時間遅れも長くなります。 この時間遅れを短縮するには、分析結果に影響が出ないラインの長さと直径を計算して調節してください。
  • 液体サンプル中継ラインの圧力が低い: 液体サンプルの場合、ポンプを使用せずに中継ラインやファスト・ループを経由してサンプルを供給するために必要な圧力を確保できる位置に、取出し口を設けてください。 変動要因(ポンプなど)は追加しないでください。時間遅れがさらに拡大することになります。
  • ガス・サンプル中継ラインの圧力が高い:ガスは、高圧になるほど流れが遅くなります。 つまり、流れを速めて時間遅れを短縮するには、圧力を下げてください。 例えば、圧力を半分にすれば時間遅れも半分になります。

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    3. サンプル調整システムで発生する時間遅れ

    サンプリング調節システムでの遅延

     
  • 置換されないティー部分がたまり部になる: たまり部があると、置換されずに残った古いサンプルが測定するサンプルに混入します。 分析用サンプル・ラインのティーまたはクロス部分は、流れが発生していないポートが1つでもあればたまり部となります。 一般的なたまり部には、圧力計や温度計の接続部分、ブリード・バルブやパージ・バルブ、校正用マニホールド、ラボ分析用のサンプリング・ポイントなどがあります。 置換時間が時間遅れにつながるため、サンプルを分析する前に、これらのたまり部の置換が必要になることがあります。 圧力計などのたまり部は、位置を変更するだけで簡単に解消できる場合があります。
  • チューブ内壁やフィルターにサンプルが吸着する:チューブ内壁面やその他の固体表面にサンプルが接触すると、サンプルの分子がわずかながら表面に吸着してとどまります。 100万分の1(ppm)単位での分析では、吸着による分子の減少(または放出による分子の増加)が分析結果に重大な影響を与える可能性があります。 ただし、これはガス・サンプルの場合のみです。 液体サンプルで吸着が問題になるのは、1 ppm未満の単位で測定を行う場合に限られます。 ガス・サンプルは、十分な待機時間を設けた後に供給源を切り替えれば、前回のガス分子を完全に除去することができます。
  • 内部コンポーネントの容積が大きい: 流体の状態を正しく表しているサンプルを維持し、分析器で正確な測定値を取得するには、流路に含まれる各装置すべての容積を置換する必要がありますが、フィルターやコアレッサなど、容積の大きな装置を完全に置換するには、相当な時間を要します。 一般的に装置内の置換には本体容積の3倍の量が必要になるため、これらのコンポーネントのサイズは、できるだけ小さくすることをおすすめします。

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    4. 分析器で発生する時間遅れ

  • 間欠分析器のレスポンス・タイム(応答時間): 分析器によっては、分析器内の分析手法等により、分析に時間を要する場合があります。 例えば、色度計は、測定対象の色を作成してから分析を行う必要があります。また、ガス・クロマトグラフは、測定対象の成分を分離した後に分析する必要があります。
  • 連続分析器のレスポンス・タイム(応答時間): 分析器が連続稼働していても、時間遅れは常に発生しているため、分析結果がすぐに得られない場合があります。
  • システム・オペレーターの手作業におけるレスポンス・タイム(応答時間): サンプルの手分析を運用している場合、オペレーターがシステムの調整が必要なことに気付いて調整をする前に、手分析で避けることのできない時間遅れを考慮するようにしてください。

  • 時間遅れを知ることがシステムの応答精度を高める

    プロセス・ラインの取出し口でサンプルが最初に採取される時点、サンプルが分析器に到達する時点、分析結果を取得する時点で、各々どれくらいの時間が経過しているかを把握しましょう。 経過時間を正しく見積もることができないということは、プロセス・ラインの構成要素と分析結果の関係性を理解していないということになります。 今回紹介した時間遅れの原因になりやすいサンプリング・システムの構成要素(プローブ、サンプルの中継、サンプルの調整、分析器)について理解を深めれば、システム内の時間遅れの発生場所を把握して、プロセス全体をより的確に制御できるようになります。

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