チューブ曲げが適しているケースと正しい曲げ加工の方法
チューブ曲げが適しているケースと正しい曲げ加工の方法
Mike Gagel、 戦略サービス・スペシャリスト、スウェージロック・ピッツバーグ/チューブ曲げトレーニング 応用コース担当講師、スウェージロック
流体システムの設計や組み立てを新たに行う際、または既存システムの部品を交換する際は、さまざまなことを決める必要があります。システムを構築するにあたって、まずは ステンレス製のチューブ とパイプのどちらを使用するのかを決めましょう。
流体システムのアプリケーションでは、従来はねじ切りしたパイプが信頼性の高い選択肢とされてきましたが、さまざまな理由からチューブも有益なオプションとなっています。その理由のひとつとして、チューブは曲げ加工や配置が容易であることが挙げられます。チューブを使用すれば、複雑ながら効率的な流体システムを、少ない接続個所で設計することが可能なのです。
チューブとパイプの違い
さまざまな産業用流体システムにおいて、チューブを曲げることで、従来のパイプ配管に比べて以下のようなメリットが得られます:
- 接続個所が少ない:接続個所が少ないということは、潜在的なリーク・ポイントも少なくなるということになります。つまり、効率が向上し、流出やフュージティブ・エミッション(排出物の漏れ)を削減することができます。
- 時間の節約:チューブ・システムは構築しやすい上、チューブを曲げることで、単純な曲げ方向の転換のたびに切断してバリを除去し、新しい継手を取り付けるという一連の作業が不要なため、作業時間を短縮することができます。
- 乱流が少ない:曲げたチューブの方が、複数の継手を介する場合に比べて流体がスムーズに流れます。
- フットプリント(設置面積)を抑えられる:小口径のチューブを曲げることで、システムのフットプリント(設置面積)をコンパクト化することができ、メンテナンスの際に、周辺の機器にアクセスしやすくなります。
チューブ曲げのベスト・プラクティス
チューブ曲げのメリットを最大限に活かすには、システムの中でチューブ曲げが適した個所を特定する方法、高品質な曲げを行うための ベスト・プラクティス 、適切な装置の使用方法を理解しておくことが重要です。今回は、チューブ曲げが適しているケース、さらにシステムの安全性と効率性を実現する方法について説明します。
1. チューブがパイプよりも適しているかを判断します。 ここで考慮すべきポイントがあります。パイプを使用して希望する配管を構築するには、パイプを切断し、バリを取り、ねじ切り加工を施さなければなりません。すべてのおねじには、PTFEテープを巻き付けるか、シール剤を塗布する必要があります。その後、レンチを使用してパイプ継手を締め付けます。システムを適切に構築すれば信頼性は高まるものの、組み立てプロセスには、かなりの作業時間を要する可能性があります。特に複雑なシステム・アプリケーションの場合は、言うまでもありません。さらに、新たに設けた継手の接続個所は、たとえベテラン作業員が組み立てていたとしても、潜在的なリーク・ポイントであることに変わりはなく、排出量の増加につながりかねません。
こういった面を考えると、チューブ曲げにはメリットがあると言えるでしょう。チューブも切断やバリ取りが必要ですが、継手を使用する代わりにチューブを曲げるだけで大半の曲げ方向の転換を行うことができます。1本のチューブを曲げるだけで複数の曲げ方向の転換を行えるのとは対照的に、パイプはさまざまな配列調整や継手の接続が必要となります。さらに、パイプのエルボーに比べて、チューブの曲げ部では、システム流体が流れる際の乱流が少なく、システム流体がスムーズに流れます。また、チューブはパイプよりも軽量なため、パイプほど多くのサポートを必要としません。
2. 曲げ方向の転換をどのように行うかを決めます。曲げ方向の転換を行うには、曲げ、または複数のチューブを高品質のチューブ継手で接続します。曲げることで大半の曲げ方向の転換を行うことができますが、曲げ加工と継手のどちらを選択すべきかは、状況によって変わります。
単純な90°の曲げ方向の転換(図を参照)は、配管に欠かせないオフセットに便利で、曲げ加工によって効率よく達成できることがよくあります。例えば、パネルを横切るチューブ配列が必要で、かつアクセスの妨げにならないようにしたい場合(図を参照)、一連の90°曲げを行うのが効率的です。曲げ加工は、狭いエリアで複数のチューブが互いに近接した状態で方向を変えなければならないようなケースでも有効です。ローリング・オフセット、平行曲げ、複雑な曲げ、分割した曲げといった複雑な方法も適用できますが、高度な曲げスキルや経験が必要になることがあります。
曲げ加工が必ずしも適切であるとは限りません。チューブを曲げ、安全に継手に取り付けるには、最低限のチューブ長さが必要です。複数の短いチューブを使用する場合は、継手で接続して曲げ方向を転換させる方が適しています。さらに、特定の曲げ方向の転換を行うのに複雑な曲げが必要な場合は、継手を使用する方が良い場合もあります。このように、チューブ曲げによって安全かつ効率的でコスト効率の高いシステムを構築するには、スキルと経験が非常に重要であることがわかります。
3. チューブを曲げるには適切なスキルが求められます。 チューブの曲げ加工は、スキルと同様に技巧が必要な作業であり、三次元的な思考を働かせて図面上の設計を物理的なシステムに変換する必要があります。
また、正確かつ高品質な曲げ加工を行うには、 チューブ・ベンダー などの使用方法も知っておく必要があります。大半の曲げ用途に使用できる一般的な機器として、ハンド・チューブ・ベンダーとベンチトップ式チューブ・ベンダーの2つが挙げられます。以下の動画では、各チューブ・ベンダーの使用方法をご覧いただけます:
ハンド・チューブ・ベンダーの使用方法:
この動画では、ハンド・チューブ・ベンダーを使用して、チューブを正確かつ効率的に90°や180° に曲げる方法をご覧いただけます。Swagelok® ハンド・チューブ・ベンダーを使用すれば、Swagelokチューブ継手に使用されている大半の材料から作られたチューブの高品質な曲げ加工を一貫して行うことができます。
ベンチ・トップ式チューブ・ベンダーの使用方法:
この動画では、Swagelok® ベンチトップ式チューブ・ベンダーを使用して、大半の材料から作られたチューブの高品質な曲げ加工を正確かつ繰り返し行う方法をご覧いただけます。
上記の動画で紹介しているベスト・プラクティスに従うことで、ごく単純な曲げにすら支障が出るようなさまざまなミスを回避することができ、結果として時間、労力、コストの削減につながります。
チューブ曲げによって安全かつ効率的な流体システムを構築するために欠かせない実用的な知識を身につけるには、トレーニング・コースの受講が非常に有益です。そこでスウェージロックでは、チューブ曲げの 基礎 から 高度な技術 までカバーしたトレーニング・コースを開発しました。このトレーニングでは、流体システムの現場ですぐに使える実践的なスキルを学ぶことができます。チューブ曲げのスキル向上に興味がございましたら、最寄りのスウェージロック指定販売会社までお問い合わせください。
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