ケミカル・プラントの安全性向上に圧力逃がし弁が欠かせない理由とは
圧力逃がし弁でケミカル・プラントの安全性を高めるには
Shaji Arumpanayil、製品マネジャー、スウェージロック
ケミカル・プラントや精製所で使用されている最新の流体システムは、規模が非常に大きくなることもあり、数え切れないほどの小口径チューブがさまざまな方向に分岐し、重要な機能を果たしています。
システムが複雑になると、予想外の場所で安全が脅かされることになりかねません。とはいっても、プラント管理者やオペレーターが、こうした複雑なシステムを隅から隅まで常時監視するというのは、到底無理な話です。そこで、ケミカル・プラントの安全性を維持するには、あらかじめ設計上の選択をしておくことが重要になります。
選択肢のひとつとして、圧力逃がし弁を流体システム内の重要なポイントに組み込むことが挙げられます。圧力が過剰になると、ブローアウト、装置の損傷、システムの不具合などにつながりかねません。圧力逃がし弁は、こうした過剰圧を逃がすという、流体システムやケミカル・プラントの全体的な安全性にとって非常に重要な役割を担っています。
安全なオペレーションに圧力逃がし弁が欠かせない理由とは
多岐にわたる重要な流体システムにおいて、設定圧力の維持は、オペレーションの効率性と安全性の両方における鍵を握っています。システム全体にわたって正確に圧力を維持する役割を担っているのは、一般的には 圧力レギュレーター です。しかし、ケミカル・プラントや精製所は高圧や危険な流体を取り扱うことが多く、予想外の圧力変化が生じることもあるため、フェールセーフ対策を講じておくことが重要です。
圧力逃がし弁 は、流体システムの設計に欠かせないこうしたフェールセーフ対策のひとつです。実際には、圧力逃がし弁は、設定した最高許容圧力を上回る圧力をシステムで検知すると開状態になり、過剰な圧力を逃がします。逃がした圧力は、システム流体に毒性があればシステムに戻され、安全な場合は大気中に排出されます。
圧力逃がし弁が作動する理由
大規模な流体システムは複雑なため、過剰圧が生じる条件は多岐にわたります。しかし、大まかには以下のカテゴリーに分類することができます。
手順上のミス: ケミカル・プラントの流体システムのオペレーションは人が行うため、どうしても人為的なミスは避けられません。担当者がシステムのバルブを誤って開いてしまった結果、二次側で圧力が上昇する可能性があります。システム条件の校正が適切に行われていなかったケースもあるかもしれません。流体システムの定期メンテナンスを行った際に、誤ったタイプの圧力レギュレーターを取り付けてしまった可能性もあります。適切な 流体システムのトレーニング を受講することで、こうした問題を防ぐことはできるかもしれませんが、オペレーションのミスが発生した場合に備えて、圧力逃がし弁を組み込むことはやはり重要であると言えます。
部品の摩耗: 流体システム部品は、時間が経つにつれて自然と摩耗します。特に反応性の高い化学物質を取り扱う流体システムでは、 適切な合金 を選定していなかった場合、腐食が原因で早期の摩耗が生じるおそれがあります。いずれにせよ、部品の摩耗によって圧力調整に支障をきたすこともあるため、圧力逃がし弁はケミカル・プラントの安全性にとって欠かせません。
コンタミネーション: 圧力レギュレーターで圧力を希望するレベルまで下げることができるものの、流体のコンタミネーションが生じた場合、圧力レギュレーターのパフォーマンスが低下するおそれがあります。パーティクルが原因でレギュレーターの シール部に出流れが生じる「クリープ現象」が発生し、二次側の圧力上昇につながるおそれがあります。このような場合、圧力逃がし弁を使用することで、不要な圧力を逃がすことができます。
電力の喪失: 流体システムによっては、一部の部品を電子制御することで、オペレーションや圧力制御を行っています。システムが予想外の電力喪失に見舞われ、部品の一部が意図した機能を果たさなくなったとしても、圧力逃がし弁があれば過剰圧を制御することができます。
圧力逃がし弁を取り付けるべき個所
ケミカル・プラントの安全性を維持するため、以下のようなアプリケーションでは、圧力逃がし弁を取り付けるのが一般的です:
高圧システム: 一定の圧力を超える流体システム・アプリケーションにおいて、圧力逃がし弁は事故防止に欠かせません。こうしたアプリケーションでは、高品質の 小口径チューブ継手 を選定することで、過剰圧のリスクを回避することができますが、高圧アプリケーションにおける追加の安全対策として、圧力逃がし弁を使用すると良いでしょう。
有毒な流体または化学物質のアプリケーション: 例えば、有毒または危険な化学物質を取り扱っているなど、システム流体の漏れが生じると直ちにプラントの安全が脅かされるようなアプリケーションでは、圧力逃がし弁の使用が安全対策として欠かせません。このようなアプリケーションにおいて過剰圧が発生した場合、逃がした圧力や流体を大気中に放出する代わりに、配管にてシステムに戻すように圧力逃がし弁を設定することも可能です。戻された流体は、その後安全に排出することができます。
圧力の影響を受けやすい装置: 圧力逃がし弁が担っている重要な役割のひとつに、圧力の影響を受けやすい分析装置を過剰圧から保護することが挙げられます。オンライン分析器 などの高価なシステムは、最高使用圧力を超える圧力にさらされると、あっけなく壊れることがあります。分析器の保護が重要なのは、分析器を使用してメイン・プロセスから直接流体を採取するためです。最適なレギュレーターを、適切な定格および設定の圧力逃がし弁と組み合わせ、流体がメイン・プロセスから分析器に到達するまでに圧力を十分に低くしておく必要があります。
システム設計を最適化し、ケミカル・プラントの安全性を高めるには
ケミカル・プラントの安全性を向上させるには、産業用流体システムの適切な個所に圧力逃がし弁を取り付けましょう。これは、最初のシステム設計時から検討してください。また、安全なオペレーションを念頭に置いてシステムを設計・構築する方法 は、他にも多数存在します。チューブ継手を混用しない、システム全体でシンプル化に努める、振動などのオペレーション要因を考慮するといったちょっとした心がけによって、システムの安全性と信頼性を高めることができます。
スウェージロックの 流体システム設計の専門スタッフ は、数十年にわたって、化学/精製業界における安全なシステム構築をサポートしてきました。ケミカル・プラントの安全性向上を実現する方法をお探しですか?スウェージロックは、ケミカル・プロセス・アプリケーションに関する専門知識を駆使し、過酷な環境であってもあらゆるシステムの信頼性を維持するべくお手伝いします。プラントの安全性を向上させるためのスウェージロックの取り組みにつきましては、最寄りのスウェージロック指定販売会社までお問い合わせください。
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