電解システムを最適化し、水素の製造効率の向上に努めていますか?
高パフォーマンスな流体システムで、電解システムの水素製造を最適化する
水素は、大きな可能性を秘めた低炭素エネルギー源として注目されています。その根拠をひとつ紹介しましょう:欧州委員会は、2030年までにEU内で1000万トンの 再生可能水素を製造 し、1000万トンを輸入するという目標を掲げています。また、中国では、グリーン水素プロジェクトの展開に伴い、2023年には電解槽の売上が 2倍以上 に達するとアナリストは予想しています。
水素を主要なエネルギー源とするには、生産能力の向上および信頼性の高い製造が欠かせません。それにはまず水素製造設備の心臓部ともいえる電解システムを最適化する必要があります。電解システムは、水を水素と酸素に変換するという重要な役割を担っています。これを効果的かつ効率的に行うには、電解システムに水を確実に供給し、水素と酸素を効率的に生成する必要があります。
つまり、このような機能を担う流体システムは、新しい水素製造設備を設計する際に非常に重要であるということです。そこで、流体システムが水素製造設備の安全性、生産性、収益性にどのような影響を与えるかを詳しく見ていきましょう。
電解槽を知る
水素製造の分野では、電解槽の設計は大きく2種類に分かれます:
アルカリ電解槽(AELまたはAWE):アルカリ電解の技術は確立されており、100年以上も前から使用されています。水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)といったアルカリ性溶液を電解液として使用し、低温で電気を通します。この電流を利用して、水を水素と酸素に分解します。水素の製造方法としては最も安価である一方で、メンテナンスのコストが高くつくのが難点です。
プロトン交換膜(PEM)電解槽:PEM電解槽は、液体ではなく、固体の電解質を使用して電気を通します。PEM電解槽は、一般的にAEL(またはAWE)電解槽よりも効率が良く、メンテナンスの頻度が少なくて済む上、フットプリント(設置面積)を削減することができます。しかし、PEM電解槽はプラチナなどの貴金属を必要とするため、オペレーション・コストが高くなります。
いずれの技術を導入するにしても、水の供給、そして水素や酸素の生成を処理・管理する堅牢な流体システムが欠かせません。
水素製造を深堀りする
エバーフュエル社が、水素の製造および貯蔵を最適化する高パフォーマンスな流体システムで、「水素社会の実現」という課題にどのように挑んできたかを紹介します。
初回取り付け時の漏れを削減する
新しい水素製造設備の操業開始が近づくと、重要な流体システムはすべて工場受入検査(FAT)の対象となります。このプロセスのうち、システム(または主要部品)の検査および装置適格性確認試験、そして文書化を、サプライヤーのサイトで実施します。水素流体システムの場合、このプロセスでは試験流体(通常は窒素)にて気密検査や漏れ試験を行うのが一般的です。
電解システムに電解液が流入すると、わずかな漏れであっても資源の浪費につながるおそれがあります。また、酸素や水素を取り出す際にも、漏れがあると貴重な資源を失うことになるばかりか、安全上の問題を引き起こすことにもなりかねません。また、こういった問題は解決するのに時間を要します。設計を適切に行って最初から漏れを最小限に抑えることで、新しい水素製造設備を成功に導くことができるのです。
現場の声
アナ・ドミンゲス、 エンジニアリング・サービス・スーパーバイザー、スウェージロック
“システムの始動時に漏れが発生する一般的な原因のひとつに、不適切な取り付けが挙げられます。これは、水素製造設備だけでなく、流体システムがオペレーションの重要な部分を担っているあらゆる施設に当てはまります。水素メーカーが、始動時のコストを最小限に抑えたいと考えるのは当然です。そこで、大きな効果が期待できる取り付けトレーニングを受講することをお勧めします。正しい知識やベスト・プラクティスを身につけた作業者が取り付けた場合、漏れにつながるようなミスを防止できる可能性が高まります。 ”
FAT中に漏れが検出された場合…
試験工程を停止する
システム内のパージを行う
漏れ個所を特定する
漏れを手作業で修復する
試験を再開する
こういった作業によって、プラントが稼動する前に、時間や材料コストが想定外に膨れ上がるおそれがあります。漏れや関連コストを低減するには、流体システムの取り付けトレーニング を受講することをお勧めします。取り付け時に確立されたベスト・プラクティスに従うことで、工場受入検査中の問題や、コストがかさむ流体システムの手直しを防ぐことができます。
クリーンな水素の生成を維持する
電解槽から水素を生成する際は、99.9%の純度を確保することが重要になります。このレベルの純度を維持するには、電解槽だけでなく、流体システム全体も重要な役割を果たします。
この課題は容易なものではありません。電解プロセス特有の高い温度や湿度が原因で、品質の低いステンレス鋼の腐食が進行し、生成した水素を電解システムから貯蔵タンクへ移送する際にコンタミネーションが生じる可能性があります。腐食が進行したチューブや継手は、不具合が生じる可能性が高まることから、腐食は安全上の問題でもあると言えます。
純度を維持するには、いくつかの方策が存在します。高品質のガス・グラブ・サンプリング・システム を使用して、生成した水素の純度レベルを定期的に分析・モニタリングしましょう。さらに、材料の選定 も自信を持って行うことが重要です。ASTM規格の要件よりも高い濃度のクロムおよびニッケルを含有する高品質のステンレス鋼であれば、腐食や水素ぜい性に対して優れた耐久性を発揮します。
生産性を最大限に高める
高品質な流体システムを採用することで、電解システムの潜在能力を最大限に引き出し、生産性を最大限に高めることができます。
漏れが発生しなければ、工場受入検査中にコストのかかる手直しを行う必要もなく、長期的に不測のメンテナンス問題などによるダウンタイム(停止時間)が発生することもありません。信頼性の高い供給とクリーンな生成を実現できれば、プロセスの効率を維持し、生産設備の耐用年数にわたって総所有コストを低減することができます。こういった理由から、電解槽を支えている流体システムの最適化に努めましょう。
より早く、より安全に、そして長期にわたって生産性を向上させるには、製造開始時に水素専用に設計された高品質の部品やアセンブリーを選定することが重要です。サポートが必要であれば、水素システムの設計経験が豊富な流体システム部品のプロバイダーにご相談ください。
現場の声
クヌート・マーカー氏、テクニカル・セールス・アドバイザー、スウェージロック・ノルウェー
“水素製造は、まさにニュー・フロンティアです。新しいプラントを確実に、そしてコスト効率よく稼働させる方法について、確立された青写真というものは存在しません。しかし、水素製造は、信頼性の高い流体移送に左右されるといっても過言ではありません。この分野では、実証済みのベスト・プラクティスが存在します。それを適用することで、水素製造プラントにおける漏れや安全上の課題、メンテナンスの問題を最小限に抑えることができるのです ”
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