圧力レギュレーターに厳格な試験が必要な理由とは
産業用圧力レギュレーターの安全なパフォーマンスに厳格な試験が必要な理由とは
背圧レギュレーターや減圧レギュレーター は、世界中のさまざまな産業環境で使用されています。赤道付近の熱帯地から極地に近い寒冷地まで、過酷な条件下でも変わらないパフォーマンスを発揮することが求められます。
非常に過酷な環境やそれに近い環境で、レギュレーターに不具合が生じると深刻な事態になりかねません。流体が外部に漏れるとコストがかさむばかりか、不具合による圧力損失によってシステムのパフォーマンスが低下し、深刻な安全上の問題につながるおそれがあります。
レギュレーターを安心して使用するにはどうすればよいのでしょうか?産業用流体システムで使用する 圧力レギュレーター を選定する際は、パフォーマンスの実証方法をサプライヤーに確認することが重要になります。例えば、一連の試験を行って高いパフォーマンスが実証されたレギュレーターであれば、過酷な現場条件で長期的に動作するといえるでしょう。
レギュレーターの緻密なエンジニアリングと、実験室ベースでの綿密な分析が、成否の鍵を握っているといっても過言ではありません。その理由を見ていきましょう。
レギュレーターの試験方法
すべてのレギュレーター・メーカーが同じ方法で試験を行っているわけではありません。パフォーマンス特性に関する業界共通の標準試験が存在しないことから、装置試験のレベルには、レギュレーター・メーカー間で大きな差があります。
産業用流体システムで使用する圧力レギュレーターを
選定する際は、パフォーマンスの実証方法を
サプライヤーに確認しましょう。
非常に過酷な条件下でレギュレーターが仕様通りのパフォーマンスを発揮するという確信を得るには、さまざまなパフォーマンス属性の試験をカスタマイズして行う必要があります。適切な方法は、予測モデリングを用いてパフォーマンス特性を理論的に予測してから、その理論を実用的な試験方法で証明することです。主な試験を以下に示します:
破壊試験:圧力レギュレーターにおいて何よりも重要なパフォーマンス基準とは、加圧下において一貫した性能を維持し続けることです。レギュレーターの予想作動圧力を上回る圧力で破壊試験を実施することで、最高使用圧力でレギュレーターが問題なく作動するかを設計時に確認することができます。信頼性の高いレギュレーターの大半は、最高使用圧力の数倍もの圧力下でも、安定したパフォーマンスを発揮します。
信頼性の高いレギュレーターの大半は、最高使用圧力の数倍もの
圧力下でも、安定したパフォーマンスを発揮します。
流体力学試験:減圧レギュレーターで6000 psi(41.3 MPa)の一次側圧力を100 psi(0.68 MPa)の二次側圧力に下げるとします。安定して信頼性の高い二次側圧力を得るには、レギュレーター内に潜在する流速や圧力を変動させる要素を設計時に明らかにすることが重要です。レギュレーター内のダイヤフラムで二次側圧力を測定するため、内部設計にわずかなブレがあっても、二次側の流れに圧力損失が生じ、パフォーマンスの低下につながるおそれがあります。
メーカーは、主に計算流体力学(CFD)と実際の流量試験を用いてレギュレーター内の圧力ゾーンを調べ、レギュレーターがシステムの仕様に沿って二次側圧力を正確に読み取り、制御しているかを確認します。CFDでは数値解析とデータ構造を用いて、流体の流れと圧力に関わる問題を解析し、解決します。圧力に影響する要素を特定することで、レギュレーターを正確に設計し、高い精度での圧力制御が可能になります。
供給圧力影響試験: 供給圧力影響(SPE)とは、一次側の依存性とも呼ばれ、一次側の圧力変化によって生じる二次側圧力の変化のことです。一次側圧力が低下すると二次側圧力が上昇し、一次側圧力が上昇すると二次側圧力が低下することになります。
大半のレギュレーターはある程度のSPEを受けるため、メーカーはそれを適切に予測し、影響を最小限に抑えることが求められます。一次側圧力の変化に対する二次側圧力の変化を示す図を提供しているサプライヤーは、少なくありません。可能な限り最小かつ正確な値を提供するには、レギュレーターのエンジニアリングと設計において、SPE試験は不可欠と言えます。
ライフ・サイクル試験:レギュレーターは、取り付け後は数百万回の作動サイクルで長年にわたりパフォーマンスを発揮すると期待されています。レギュレーターが設計通りのパフォーマンスを長期にわたって達成するかを調べるには、一連のライフ・サイクル試験を行うとよいでしょう。
ライフ・サイクル試験は、ベンチ試験として、さまざまなサイクル負荷(場合によっては一秒あたり最大120サイクル)で実施されることがあります。この試験は、レギュレーターのパフォーマンスに影響を与える可能性のある摩耗がいつ、どこで発生するかを特定することを目的としています。これが明らかになれば、予測可能な摩耗パターンに対して、適切にレギュレーターを設計することができます。
長年にわたり、安定したパフォーマンスを発揮するレギュレーターが望まれています。
熱試験:圧力レギュレーターは、さまざまな環境条件での使用が想定されるため、異なる温度条件でレギュレーターのパフォーマンスを確認することは、適切な製品開発と設計に不可欠と言えます。
例えば、ステンレス鋼製の圧力レギュレーターは、一般産業アプリケーションで使用されることが多く、大半の状況下で予測通りのパフォーマンスを発揮します。しかし、極端な高温や低温下では、シール性能に影響が及びます。エラストマーの中には、温度が非常に高いと膨潤し、非常に低いと材料が硬化して収縮するものがあります。各条件によって、確実なシール性能、ひいてはレギュレーターのパフォーマンスが低下するおそれがあります。
徹底的なレギュレーター試験の意義
あらゆる産業用流体システム部品にとって、実環境でのパフォーマンスは、成功を表す究極の指標といえるでしょう。圧力レギュレーターは、最高のパフォーマンスを発揮し、必要に応じてシステム圧力を正確に安全かつ確実に制御することが求められます。
メーカーの製品設計と試験プロトコルによって、レギュレーターの性能が決まるといっても良いでしょう。システムで使用するレギュレーターを選定する際は、レギュレーターのサプライヤーに対し、実環境における厳しいパフォーマンス課題に対応するべく製品をどのように設計・試験しているかを確認することをお勧めします。ぜひスウェージロックのレギュレーター担当者にご相談ください。さまざまな産業のレギュレーター・アプリケーションに幅広い実績を持つレギュレーター担当者が、お客さまの圧力調整のニーズを評価し、お客さまの継続的な成功につながるソリューションを明らかにするべくサポートいたします。
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