圧力レギュレーターでよくある問題のトラブルシューティング方法
圧力レギュレーターでよくある問題のトラブルシューティング方法
産業用流体システムのプロセスは、流体の温度、流量、圧力の設定に左右されるため、これらが正確でなければ、意図した通りに稼働させることはできません。圧力レギュレーター(または減圧弁)をはじめとする多くの主要機器が、必要なプロセスの状態を維持する鍵を握っています。
では、圧力レギュレーターが機能しない、または正常に作動しない場合はどうなるのでしょうか。
圧力レギュレーターは、システムのパラメーターの変化に応じて、システム圧力を制御します。二次側の圧力は低下または上昇することがありますが、いずれの場合も、プロセスの品質や安全性を損なうおそれがあります。もし予期せぬ圧力変化の原因を特定することができれば、事態が深刻化する前に問題を解決することが可能です。
産業用流体システムの至る所に、圧力変化につながる要因が存在しますが、よくある問題の中には、特定して解決できるものもあります。今回のコラム記事では、レギュレーターの問題のトラブルシューティングを行って、レギュレーターの不具合を低減するためのシンプルな3ステップ・プロセスを紹介します。
ステップ1:具体的なプロセスのニーズおよび適切なレギュレーターのタイプを理解する
トラブルシューティングの最初のステップでは、プロセス要件(システム流量、システム圧力、システム温度、プロセス感度、システム流体など)を調べて、適切なタイプのレギュレーター が取り付けられているかどうかを判断しましょう。簡単に言うと、メイン・プロセスに圧力が到達する前に、圧力源からの圧力を制御する必要がある場合は、減圧レギュレーターが必要になります。一次側からの圧力を制御する必要がある場合は、背圧レギュレーターが必要になります。
よくあるミスとしては、使用しているレギュレーターのタイプが適切でないことが原因で、プロセスに支障をきたしているケースが挙げられます。適切かどうかの判断がつかない場合は、レギュレーターのサプライヤーに相談 すれば、そのプロセスに適切なタイプのレギュレーターを特定できるでしょう。適切なタイプのレギュレーターを取り付けていることが確認できたら、ステップ2へ進んでください。
ステップ2:問題の本質を明らかにする
次に、問題の本質を明らかにします。圧力が設定圧力を上回っていますか?それとも設定圧力を下回っていますか?
設定した圧力が目標とする圧力を下回っていますか?
設定した圧力が目標とする圧力を上回っていますか?
圧力が設定圧力を上回っているときは、2つの問題のうちのどちらかに該当するケースが大半です。1つ目は、レギュレーターの初回の試運転の直後に生じるクリープと呼ばれる現象です。これは、取り付け時に出た異物がシステムに混入することで起こります。コンタミが原因で、レギュレーターのシートとポペットの間にわずかなすき間ができます。これにより、システム流体がシートから流れ込み、二次側で圧力上昇を引き起こすという望ましくない現象が生じることがあります。二次側部品の最高使用圧力を上回るおそれもあることから、クリープは非常に危険です。しかしクリープは、慎重に取り付ける、一次側にフィルターを取り付ける、新しいレギュレーターのスペア・キットを購入するといった対策をとることで、回避することができます。
望ましくない圧力上昇の2つ目の原因は、供給圧力影響(SPE)です。これは、一次側(供給側)の圧力変化によって、二次側の圧力が変化することで生じます。一次側圧力が低下すると、二次側圧力が所定の要件よりも上昇することがあります。SPEが設定圧力に影響しているおそれがある場合は、ステップ3へ進んでください。
圧力が設定圧力を下回る一番の原因は、アプリケーションの流量要件に対してレギュレーターのサイズが小さいことです。例えば、レギュレーターの設定圧力が70 psiとして、二次側の流量が増加したにも関わらず、圧力調整を行わなかった場合、圧力が目標の70 psiを下回ることがあります。このような圧力低下は、ドループと呼ばれています。スウェージロックが提供している 流量曲線作成ツール を使用することで、レギュレーターのサイズがアプリケーションに適しているかを判断することができます。これが原因であると判断した場合は、ステップ3へ進んでください。
これらの原因が当てはまらない場合は、かなり複雑な問題がレギュレーターに生じているおそれがあります。流体システムのオペレーションに詳しいレギュレーター・サプライヤーであれば、さらに詳しい評価 を行って、原因を特定するサポートを提供できるかもしれません。
ステップ3:他のレギュレーターを検討する
SPEが原因の場合、レギュレーターのタイプによっては、この現象の影響を緩和できることがあります。例えば、バランス型ポペットを採用したレギュレーターを使用すると、一次側圧力の影響を受けるエリアを最小限に抑えることができます。また、二段式の減圧策を採用することで、大半のアプリケーションで供給圧力影響を最小限に抑えることができます。この方法では、2つの単独レギュレーターを直列に取り付ける か、複数のレギュレーターをひとつのアセンブリーにまとめます。
サイズが小さいことが原因である場合は、流量係数が大きいレギュレーターを選定することで、二次側圧力が不意に低下する可能性を低減することができます。アプリケーションに適したレギュレーターのサイズを決定する際は、サプライヤーにサポートを依頼することをお勧めします。または、スプリング・ロード式レギュレーターからドーム・ロード式レギュレーターに切り替えることで解決できる場合もあります。ドーム・ロード式レギュレーターは、流量の変化に対する耐性に優れているため、流量が大幅に変化するアプリケーションにおいても設定圧力を維持しやすくなります。
上記は、レギュレーターのパフォーマンスが良くない場合に考えられる原因のほんの一部に過ぎません。アプリケーション特有の要因が他に存在し、成果に何らかの悪影響を及ぼしているケースも考えられます。レギュレーターのサプライヤーに、各アプリケーションのニーズに適したレギュレーター選定のサポートを依頼してみてはいかがでしょうか。圧力レギュレーターの新しいアプリケーションに関する相談や、現在抱えている問題がありましたら、スウェージロックにご相談ください。専門スタッフがレギュレーターと流体システムのパフォーマンスの最適化をサポートします。
関連コラム
レギュレーターの流量曲線を平坦にしてドループを抑える方法
ドループ(流量増加に伴う二次側圧力の降下)は、あらゆるレギュレーターに共通する問題です。今回は、ドループを最小限に抑えてレギュレーターの流量曲線を平坦にする方法を、さまざまなドーム・ロード式レギュレーターの構成と併せて紹介します。
背圧レギュレーターのセットアップ:サンプリング・システム担当エンジニア向けのヒント
背圧レギュレーターは、分析サンプリング・システムのプロセス・ラインの入口側圧力をコントロールします。今回は、システムに背圧レギュレーターを安全にセットアップする方法を紹介します。
レギュレーターの供給圧力影響(SPE)に対処する
レギュレーター内部における一次側圧力の変化と二次側圧力の変化は、供給圧力影響(SPE)または依存性による反比例の関係にあります。今回は、圧力レギュレーターで発生する供給圧力影響(SPE)による現象への対処方法を紹介します。