水素を測定・制御する
水素を測定・制御する
水素燃料電池には、エネルギーおよび電力の供給源として、大きな期待が寄せられています。輸送・運搬から、蓄電池・携帯用電池・緊急時のバックアップ電源まで、幅広いアプリケーションで使用することが可能です。その副産物は水だけという、化石燃料に代わるグリーンな(CO2の排出が無い)エネルギーの代表格。使用しているのは、世界で最も豊富で再生可能な資源である水素です。
しかし、このようにクリーンかつ豊富な水素は、取り扱いが難しい資源でもあります。水素分子は非常に小さいため、シールのわずかな欠陥からでも漏れ出し、固体金属に浸透して延性を低下させ、最悪の場合には材料の破損に至るおそれがあります。このような水素を封止するには、高度な設計を採用した装置および専門知識が欠かせません。つまり、水素燃料への移行を普及させるには、その原動力となる水素燃料電池向けの信頼性の高い試験技術が求められます。
ソリューションの実現に向けて
AVL社 は、自動車産業における試験やシミュレーションを行っている世界最大の独立系企業です。同社は、過去3年間にわたって、水素消費量測定装置「AVL HyTronTM」でその技術開発を強力に推し進めてきました。オーストリアを拠点とする同社は、水素燃料電池試験装置を世界で初めて開発しました。この装置は、実際の水素燃料タンクの挙動を模倣し、試験台上の実際の状況を再現します。また、水素ぜい性に強く、適切な圧力で流量を供給し、スタックのコンタミネーションにつながる漏れを防止します。
効率化や認証取得を実現するべく、HyTronは過渡試験や静的試験における正確な水素流量測定、そして正確で信頼性が高く、測定可能な水素供給を行います。これらは、燃料電池システムの試験や開発に不可欠です。また、正極で必要なガス圧を満たす流量範囲であることが求められるほか、スタックの触媒に影響を与えかねないコンタミネーションを放出する可能性がある材料を使用することはできません。さらに、被試験ユニット(UUT)の改造や修理を行っている場合は、供給ラインを不活性ガス(窒素など)でパージし、24時間365日、安全かつ高い品質のオペレーションを行う必要があります。
新たな業界標準
長期にわたってディーゼル/ガソリン燃料OEMに特化した試験装置を提供してきた企業にとって、HyTronは転換点を意味します。そして、HyTronはすでに水素測定のレベルを引き上げています。「AVL HyTronは非常に短い期間で開発されたにも関わらず、すでに水素の供給と水素消費量の測定における業界標準となっています」とAVLの事業セグメントであるアドバンスト・メジャメント・テクノロジーズ社でグローバル・セグメント・マネジャーを務めるジェラルド・ソマー氏は述べています。
また、HyTronの製品マネジャーであるデイビッド・ビショフ氏は、次のように語ります。「当社の顧客である世界各地の主要OEMは、従来の内燃エンジン試験台を水素で動作するように改造するという課題に直面しています。安全性、すなわちガス状で爆発性のある化学物質は使用しないというのが最優先事項です。一方、水素、内燃エンジン、燃料電池のシステム全体を検証して認証を取得するには、再現性のある水素消費量の測定が非常に重要です。AVL HyTronは、まさにこのためのソリューションです。消費量測定機能付き試験台を開発するにあたって、安全なガス供給を行うために工業化された統合ソリューションなのです」
スウェージロック:信頼できるパートナー
AVL社によると、スウェージロック・オーストリアとパートナーシップを組んだことで、水素燃料技術へスムーズに移行することができました。「スウェージロックは、水素と水素適合部品の分野において信頼できるパートナーです」とソマー氏は述べています。ビショフ氏は、「パートナーシップに信頼を寄せている背景には、スウェージロック・オーストリアが持つ専門知識があります」と述べ、こう付け加えます。「特に製品の品質に関して言えば、私たちの経験上、スウェージロックの部品は非常に優れています。当社にとって非常に重要なのは、接続部を管理し、遠隔地にある顧客の試験台で漏れが生じるリスクを回避することです」
AVL社の開発プロジェクト・マネジャーで、主にHyTron測定器を担当するトーマス・ロートレンダー氏は、「スウェージロックが他社と異なるのは、水素分野におけるノウハウとTÜV認証を取得した測定結果です」と述べています。AVL社とスウェージロック・オーストリアには、長い歴史や共通の価値観、ビジネスへのアプローチといった多くの共通点がありますが、この関係で重要なのは、相互理解、共通の目標、共通の専門知識に基づく信頼です。「当社は、スウェージロック・オーストリアを信頼しています。そして、スウェージロックの製品そのものを信頼しています。水素アプリケーションで使用しているチューブ継手は、漏れの無いシールを形成することが求められます。これは、システムの安全性や従業員の安全性にとって絶対に欠かせません」
ロートレンダー氏は、次のようにも述べています。「当社の見解では、装置に漏れがなく、その状態を維持することが非常に重要です。なぜなら、当社は主に水素に関する世間の誤解と戦っているからです。そして今、水素に関して世界で考えられる最悪の事態といえば、どこかで事故が発生することです。つまり、厳重なシステムを提供し、水素が非常に有効で、私たち一人ひとりが毎日使うガソリンやディーゼルよりも危険ではないということを、お客さま、ひいては世界に示すことがより重要なのです。当時、特に水素に関して保証可能なTÜV認証を提示できるサプライヤーは、スウェージロックだけでした」
“スウェージロックが他社と異なるのは、水素分野におけるノウハウとTÜV認証を取得した測定結果です”
トーマス・ロートレンダー氏
開発プロジェクト・マネジャー、AVL社
スウェージロック・オーストリアは、AVL社が適切な材料を選定する際にサポートを行ったほか、自動車産業にとって特に重要な認証や、使用する可能性のあるさまざまなチューブ継手を提供しました。スウェージロック・オーストリアでエリア・セールス・マネジャーを務めるセバスチャン・プリス氏は、次のように語っています。「自動車産業で仕事をする場合、認証は常に大きな問題です。例えば、ATEXや3.1認証など、水素システムに使用する材料を明確にするには、認証が必要です。特に水素を使用する場合は、当社が使用している316ステンレス鋼が理想的です」
高品質の部品とそれを管理するためのトレーニング
スウェージロック・オーストリアは、実際に使用する部品に加えて、AVL社のチームが水素流体システムの管理方法を習得するための重要なトレーニングも提供しています。「当社では多くのトレーニングを実施してきました。スウェージロックが提供している安全セミナーは、Swagelok®チューブ継手を取り扱う上で非常に重要です。水素を使用する際はなおさらです」とプリス氏は話します。また、ロートレンダー氏は次のように述べています。「製造チームが十分なトレーニングを受けることは、当社にとって重要でした。それによって、チームも私たちも、できれば一発で試験に合格するような厳重な装置を作っているのだという安心感を得ることができます」また、ビショフ氏はこう語っています。「スウェージロックが提供するトレーニング・コースを受講したことも、スウェージロックのノウハウを当社の製造に取り入れる上で、非常に役立ちました。接続技術を適切に使用すれば、漏れを防ぐことができるのです」
AVL社が、スウェージロック・オーストリアとパートナーシップを組んだことで、HyTronプロジェクトの生産性や効率性が向上しました。ロートレンダー氏はこう述べています。「当社が言えるのは、過去数年間にわたって一貫して優れた品質を提供し、水素というものを理解し、水素が他のガスとは異なるものであることを理解しているパートナーがここにいるということです。ノウハウの面でも、部品の面でも、最初からしっかりとサポートされていると感じています。スウェージロックが長年にわたって水素を取り扱ってきたのは明らかです。そして、私たちがその恩恵を受けているのは間違いありません」
“スウェージロックが提供するトレーニング・コースも、スウェージロックのノウハウを当社の製造に取り入れる上で大きな利点となりました。接続技術を適切に使用すれば、漏れを防ぐことができるのです”
デイビッド・ビショフ氏
製品マネジャー、AVL社
そして、クリーンかつ再生可能な水素燃料が世界の主要エネルギーとなりつつあるからこそ、このような経験と専門知識によって、水素がより安全で効率的なものになるのです。
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