小口径の継手:ねじサイズとピッチ
継手の基礎:ねじのサイズとピッチを識別する
一般産業用流体システムでは、1つひとつの部品を連携させて、プロセス流体を目的の場所に移送できるかがポイントとなります。部品の接続部から漏れが生じた場合、施設の安全性や生産性を維持することはできません。そして接続個所に使用されている 継手 は千差万別です。
小口径配管システム(2 インチ・サイズ以下のチューブ・システム)の場合、流体システムに適した継手を識別するには、まずねじのサイズとピッチを特定しましょう。ねじのサイズとピッチを特定できれば、適切な継手を選定して、漏れの無い流体システムを構築することができます。
下の動画では、ノギス、ねじピッチ・ゲージ、ねじ識別ガイドを使用して、
ねじのピッチとサイズを正しく識別する方法を手順ごとに説明しています。
エンド・コネクションが重要な理由
一般産業用流体システムでは、危険な液体や気体を扱うことも多く、時には高圧や高温になることもあるため、流体システムが適切なサイズの継手で正しく接続されていることが重要です。
流体の中には吸い込むと有害なものもあり、プラントの作業現場では直ちに安全上の脅威となります。可燃性の流体は、着火源が存在すると爆発するおそれがあります。また、あらゆるタイプの流体を取り扱う高圧システムでは、継手の取り付けが不適切であったり、接続方法が間違っていたりすると、部品のブローアウトが生じることもあります。
安全への懸念に加えて、漏れなどの不具合が生じると、多額のコストやメンテナンスといった問題が発生することになります。流体の漏れによる金銭的な損失を被るだけでなく、メンテナンスが必要になってダウンタイムが発生すれば、生産量の大幅な減少にもつながりかねません。
以上の理由から、産業環境における流体システムの漏れのないパフォーマンスが非常に重要なのは明らかです。これを実現するには、接続するサイズと形状を理解して、選定することが必要です。
ねじ/エンド・コネクションの基礎
経験豊かなベテランでも、継手のねじサイズやピッチを識別するのは容易ではありません。適切な判断を行うには、まず一般的なねじおよびエンド・コネクションの用語と、それらを規定する規格を理解し、特定のねじを分類することが重要です。これには次のようなものがあります:
- 「おねじ」と「めねじ」:ねじは、継手に付いている位置によって 「おねじ」と「めねじ」 に分類されます。継手の外側にねじが付いているのがおねじ、継手の内側にねじが付いているのが めねじで、おねじをめねじにねじ込んで接続します。
- 「ねじ山の頂点」と「ねじ山の底点」: ねじの最も高い部分は 「ねじ山の頂点」 、最も低い部分は 「ねじ山の底点」と呼ばれます。頂点から底点に至る平面は 「ねじ山の側面」と呼ばれます。ねじの規格が異なると、ねじ山の頂点とねじ山の底点の形状が異なることが多く、漏れのないパフォーマンスを実現するには、規格を一致させることが不可欠です。
- 「ピッチ」: ピッチ とは、インチねじおよび管用ねじの場合、インチ当たりのねじ山数を指します。メートルねじの場合は、隣接するねじ山間の距離を指します。 ピッチを識別するには、 NPT 、 UTS、 ISO などのねじ規格を参照してください。ピッチを識別する際は、これらの規格のうち、どの規格がシステムに適用されるかを識別し、規格に準拠するようにしてください。
- 「角度」: ねじの 角度 は、ピッチとは異なり、ねじ間の角度の度合いを表しています。ピッチと同様に、角度は一般的に関連規格によって決まります。
2つの関連規格を比較すると、継手の主な違いと、その違いが漏れのないシール形成にどう影響するかを知ることができます。ISO 228/1[別名:BSP(British Standard Pipe)]のねじは、ねじ山の角度が55° で、ねじ山の頂点とねじ山の底点が丸いのが特徴です。一方、ユニファイねじ規格では、ねじ山の角度が60° と規定されており、ねじ山の頂点とねじ山の底点が平らになっています。このような違いがあるため、2つの継手タイプは互換性がなく、組み合わせても漏れのないシールを形成することはできません。継手の互換性がわからない場合は、継手をチェックしてみましょう。信頼できるメーカーの継手であれば、準拠規格を示すマーキングが付いていることが大半です。
ねじタイプを識別する
ねじのサイズとピッチを識別する際は、適切なツール( ノギス、ねじピッチ・ゲージ、ねじ識別ガイド)を準備してください。これらのツールを使用して、対象のねじが「テーパーねじ」か「平行ねじ」かを特定します。.
テーパーねじは、 ダイナミックねじとも呼ばれます。テーパーねじは、おねじとめねじの側面が相互に押しつけ合うことでシールします。テーパーねじはセンターラインに対して角度が付いており、平行ねじはセンターラインに対して平行になっています(以下の図を参照)。ねじシール剤やねじテープを使ってねじ山の頂点とねじ山の底点の間のすき間を埋め、接続部からのシステム流体の漏れを防止してください。テーパーねじは、一般的に103.4 MPaまでのシステム圧力に有効です。
テーパーねじは、一般的に103.4 MPaまでのシステム圧力に有効です。
平行ねじは、一般的にシステム圧力が34.4 MPa未満のアプリケーションで使用されます。
平行ねじは、メカニカルねじとも呼ばれます。平行ねじ自体にシールする機能はありませんが、チューブ継手のボディにナットを固定することはできます。漏れのないシールを実現するには、ガスケット、Oリング、金属同士の接触などによってシールを形成する必要があります。このため、平行ねじは、一般的にシステム圧力が34.4 MPa未満のアプリケーションで使用してください。
平行ねじかテーパーねじかを特定するには、ノギスを使用して、おねじまたはめねじのねじ山(第1山、第4山、最後の山)の頂点間の外径を測定します。外径が増加(おすエンド)または減少(めすエンド)している場合は、テーパーねじです。外径が同じ場合は、平行ねじです。
平行ねじかテーパーねじかを特定するには、ノギスを使用して、
おねじまたはめねじのねじ山(第1山、第4山、最後の山)の頂点間の外径を測定します。
圧力が決定要因ではない場合、一般的にユーザーの好みで平行ねじかテーパーねじかを決めて構いません。大規模なシステムでは、すべての接続部で同じねじタイプを指定しておけば、取り付け担当者が混乱することはないでしょう。
ねじ外径サイズを測定する
平行ねじとテーパーねじを識別できたら、次はねじ外径を特定します。再びノギスを使用して、ねじ山の頂点間からのおねじまたはめねじの呼び外径を測定します。平行ねじの場合、いずれかのねじ山の外径を測定します。テーパーねじの場合、第4または第5のねじ山を測定します。
整合性を保つべく、ねじ山の頂点とねじ山の底点の形状に注意してください。
この測定を行う際は、整合性を保つべく、ねじ山の頂点とねじ山の底点の形状に注意してください。ねじ山の頂点とねじ山の底点の形状が異なっている場合、外径サイズの測定値が一致していたとしても、組み合わせても互換性はありません。
本手順で測定した外径サイズは、記載しているねじの呼び径と正確に一致しない場合があるのでご注意ください。このような公差が見られる主な原因としては、工業または製造の許容差が挙げられます。継手の製造業者が提供しているねじ識別ガイドを使用して、外径ができるだけ近いねじサイズを特定してください。
ねじピッチを特定する
次は、ねじピッチを特定します。今度はねじピッチ・ゲージ(別名:ねじコーム)を使用します。各ねじピッチ・ゲージ・フォームをねじ山に当てて、適合するものを見つけます。インチねじのフォームとメートルねじのフォームは非常に似ている場合があるため、時間をかけて念入りにチェックしてください。
ねじ規格を判別する
最後に、ねじ規格を判別します。おねじ/めねじ、ねじのタイプ、呼び外径サイズ、ピッチを特定したら、ねじ識別ガイドを使用して、対象のねじの規格を識別します。スウェージロックが発行している『 Swagelokねじ/エンド・コネクション識別ガイド 』を使用することで、ねじ規格の特定とエンド・コネクションの識別を容易に行うことができます。
信頼性の高い一般産業用小口径流体システムの開発、構築、メンテナンスに役立つ、ねじの識別などのスキルを身に付けたいとお考えですか?ぜひ スウェージロック基本セミナー の受講をご検討ください。スウェージロック認定トレーナーは、世界各地のシステム担当者が信頼性の高いシステム・パフォーマンスに関して自信と知識を深めることができるようサポートいたします。詳細につきましては、スウェージロック指定販売会社までお問い合わせください。
関連コラム
流体システムの漏れの一般的な原因とコスト
プラントのメンテナンス担当者として安全性と収益性を考えるなら、ごくわずかな漏れであっても問題視すべきです。 だからこそ、漏れが発生する原因とメカニズム、漏れの発生場所を特定して検査する方法、さらに最終的にはプラント全体で漏れを削減する方法を策定することが有益といえます。
一般産業用流体システム・コンポーネントの寿命を最長化する
一般産業用流体システム・コンポーネントを1つ交換するのに必要なコストが、コンポーネント自体の価格を上回ることもあります。 今回は、システムのコストを抑えつつコンポーネントの寿命を最長化するための予防保全のヒントを紹介します。