グリーン水素が持続可能な燃料源である理由
水素:真に持続可能な代替燃料
Chuck Hayes、グローバル技術主幹、スウェージロック
世界では、化石燃料に代わる燃料の開発が進んでいます。その主な原動力となっているのが、持続可能性です。幅広いアプリケーションから排出される二酸化炭素(CO2)の量を削減して完全にゼロにするという目標が、ますます重要になっています。
代替燃料に関しては、次のような疑問を持つことが重要です。「その燃料は、真に持続可能なのだろうか?」
評論家らは、有望な代替燃料としてさまざまなアプリケーションで普及が進む水素について、この疑問を投げかけています。その答えは「はい、水素は持続可能な代替燃料になり得ます」です。 水素にまつわる誤解を解くシリーズの最終回となる本コラム記事では、さまざまな水素製造方法を取り上げ、水素が真に持続可能な代替燃料としての選択肢となる理由を探ります。
水素燃料の種類と製造方法
水素の持続可能性は、その製造方法次第と言っても過言ではありません。水素を作るにはエネルギーが必要であり、水素が真に持続可能かどうかは、そのエネルギー源や 製造方法 によって決まります。水素製造がどのくらい「クリーン」であるかを理解するには、水素を色別に理解することが重要です。
グレー水素
グレー水素は化石燃料から作られており、化石燃料を直接燃焼する場合と比べて二酸化炭素の排出量を削減することができます。現在、グレー水素は製造コストが最も低く、世界の水素生産量の大半を占めています。
グレー水素の主な製造方法は、蒸気メタン改質と石炭ガス化です。両プロセスはいずれも、CO2を大気中に放出します。そのため、グレー水素は、今回取り上げる水素の中で最も持続可能性が低いということになります。
ブルー水素
ブルー水素は、グレー水素と同様に、蒸気メタン改質や石炭ガス化によって作られます。ただしブルー水素の製造過程では、排出されたCO2は回収・貯留され、大気中に放出されることはありません。
炭素が回収されることから、ブルー水素は低炭素燃料として分類され、グレー水素よりも持続可能性の高い選択肢となります。ただし、炭素回収プロセスは製造サイクルにコストを上乗せすることになるため、燃料価格が若干高くなります。
グリーン水素
グリーン水素は、電気分解(水を酸素と水素に分解するプロセス)によって作られます。グリーン水素に分類されるには、その電解プロセスにおいて風力発電や太陽光発電による再生可能電気を使用する必要があります。それによって、グリーン水素は真にゼロ・エミッションの燃料源となります。このようなクリーンな代替手段を利用することは、製造コストを押し上げることになります。
水素のコストが下がりつつある理由
ブルー水素やグリーン水素は、グレー水素や従来の化石燃料より製造コストが高くなりますが、消費者が負担するコストは、時が経つにつれ下がると見られています。これには理由があります。
第一に、原油価格の下落を容認できないとして、主要産油国は生産レベルを大幅に引き下げています。また、主要産油国は脱炭素化に向けた長期的な取り組みも行っていることから、内燃エンジン(ICE)車のドライバーが購入するガソリンや軽油の値上がりが進む可能性があります。
その一方で専門家は、10年以内にグリーン水素燃料がコスト面で従来の燃料源と遜色ないものになるとの見解を示しています。この一因となっているのが太陽光発電、風力発電、水力発電のコスト低下であり、水素の価格にさらに影響を及ぼすこととなるでしょう。また、各国政府はより厳しい二酸化炭素排出基準を制定していることから、クリーン・エネルギーの発展を奨励する助成金の拠出が期待されています。
結論
水素は持続可能な方法で製造することができ、現在市場に出回っている化石燃料に代わる最も環境に優しいエネルギー源のひとつです。水素の種類によって持続可能性は異なるものの、グレー水素やブルー水素であっても、使用時のCO2排出量を削減することができます。また、グリーン水素への大型投資は世界各地で増加の一途をたどっており、業界関係者は製造の効率化やエンド・ユーザー向けの価格を引き下げる方法を模索しています。
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