サンプリングのニーズを分析する
グラブ・サンプリングとオンライン分析器:選定のポイント
あらゆる産業施設においてサンプリングは欠かせませんが、オペレーションを効率的に行う方法は、大きく分けて2つあります。
古くからある方法の グラブ・サンプリング(別名:スポット・サンプリング、フィールド・サンプリング、または単にサンプリング)は、さまざまなアプリケーションで使用されてきました。グラブ・サンプリングでは、モニタリングが必要なプロセスの近くに1つまたは複数のグラブ・サンプリング・パネルまたは取出し口を設置します。一般的にサンプルをボトルまたはボンベ(プロセスによって異なる)に採取し、分析室に運んで分析を行います。
一方、オンライン分析器を使用するケースが増えつつあり、特に新規のプラントではその傾向が見られます。このようなケースにおいては、プロセス・サンプルを近くのシェルターに移送し、自動で分析を行い、プロセス・ラインに戻します。このケースでは、オペレーターの手作業なしで流体の特性を継続的にモニタリングすることができます。
それでは、どちらを使用すればいいのでしょうか?グラブ・サンプリングを使用するのか、またはアナライザー・シェルターを設置してリアルタイムのモニタリングを行うのかという判断は、単純な話ではないかもしれません。プラントはふたつとして同じものはなく、考慮すべきポイントが数多く存在します。
主なチェック・ポイントを以下の表にまとめていますので、サンプリングのニーズを分析する際にご活用ください:
条件: | グラブ・サンプリング | オンライン分析器 | 分析: |
プラントのスペースが限られている | オンライン分析器は周囲の環境条件の影響を受けやすいため、適切なシェルターに収容 して、周囲の環境条件を安定させるのが一般的です。シェルターを設置するにはかなりのスペースが必要になります。スペースに余裕がない場合、グラブ・サンプリング・パネルであれば、小さなスペースに設置することが可能です。 | ||
予算が限られている | オンライン分析器は、グラブ・サンプリング・パネルに比べて多くの初期投資が必要になります。オンライン分析器では、シェルターの設置に加えて、高度なサンプル調整システムで分析用のサンプルを準備する必要があります。この追加システムにより、初期投資が効果的になることもあります。 | ||
プロセスに危険物質が含まれているため、人体への暴露を制限する必要がある | パネルなどでサンプルを採取する際は、オペレーターが手動でボトルやボンベに流体を採取することになります。適切な設計を行ったグラブ・サンプリング・システムであれば、安全上のリスクを軽減することができる一方、分析器の場合は定期的な接触を減らすことができます。オンライン分析器の結果を検証するには、定期的なグラブ・サンプリングが必要になることを覚えておきましょう。 | ||
流体システムの規模が大きく、複数のポイントからサンプルを採取する必要がある | グラブ・サンプリング・パネルはコンパクトなため、サンプル取出し口の近くに設置することが可能です。オンライン分析器では、プロセス・ラインのサンプル取出し口から分析器の設置場所までの配管が必要になります。遠く離れた場所からサンプルを採取する必要があるアプリケーションの場合は、分析器まで長い配管を設置するのではなく、各ポイントにグラブ・サンプリング・パネルを設置することをご検討ください。 | ||
サンプルの純度が重要である | コンタミネーションのリスクはいずれにも存在しますが、その形態は異なります。複数のプロセスのサンプリングを行う場合、グラブ・サンプリング用ボンベを徹底的に洗浄することでクロス・コンタミネーションを防止する必要があります。一方、オンライン分析器で2つのプロセス流路を分析する場合は、適切な流路選択機器を装備して、クロス・コンタミネーションを防止する必要があります。システム設計 を適切に行い、ベスト・プラクティス を順守することで、いずれのアプリケーションにおいてもコンタミネーションの可能性を低減することができます。 | ||
時間遅れを最小限に抑える必要がある | オンライン分析器の主な特長として、サンプルの状態をリアルタイム(一般的にはプロセス・ラインから採取後1分以内)で分析できることが挙げられます。相の状態(気体・液体)が変化しやすいデリケートなシステム流体に適しています。 | ||
プロセスが変化するスピードが非常に遅い | グラブ・サンプリングの場合、パネルなどから採取したサンプルを分析室に運んで分析するには最大で24時間かかることがあります。プロセスが変化するスピードが速い場合は、分析器を使用する方が有益と言えます。ただし、プロセスが変化するスピードが非常に遅い場合は、グラブ・サンプリングでも支障はないでしょう。 | ||
サンプル温度の維持が重要である | サンプルをできるだけプロセス温度に近い状態に維持する必要がある場合は、オンライン分析器が適しています。サンプルを分析器に送る配管を加熱することで、サンプル温度を効率的に維持することができます。グラブ・サンプリングの場合、サンプルをプロセス温度に維持するのは容易ではありません。ボンベ内のサンプル温度を維持する同等の方法は存在しません。 | ||
現場の周囲環境の状態が変化する | 周囲環境の状態が大幅かつ頻繁に変化する環境で流体システムを使用する場合は、考慮すべき点があります。グラブ・サンプリングは、適切にコントロールされた分析室環境でサンプルを分析することができる便利なオプションといえます。一方、アナライザー・シェルターには防爆型エアコンが必要になるものの、雨や雪、猛暑といった過酷な環境下でサンプルを採取する必要はありません。 | ||
サンプリング対象のプロセス中に多量のパーティクルが存在する | オンライン分析器では、調整システムにフィルターを具備して目詰まりを防止し、分析結果の精度を確保する必要があります。しかしながら、固体パーティクルを多く含むプロセスでは、フィルターで除去するのが容易でないケースもあります。その場合は、グラブ・サンプリングを使用できます。 |
上記のチェックリストは、グラブ・サンプリングとオンライン分析のどちらが施設に適しているかを判断する基準の一例に過ぎません。あらゆる状況に当てはまる基準はないため、いずれの方法が適しているかを判断する際は、具体的な状況をよく検討してみてください。
判断基準についてさらに検討するには、 サンプリング・システムのスペシャリスト にご相談ください。オペレーション条件やシステム設計の評価を行い、オペレーションに適したセットアップを選定するお手伝いをします。スウェージロックのチームがサポートいたします。詳細について興味がございますか?今すぐお問い合わせください。
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