小口径チューブ継手に関する仕様のアップデート
IOGPによる小口径チューブと継手に関する最新の仕様によって、オイル/ガス生産における安全性が向上する理由
世界各地のオイル/ガス生産者にとって、安全性は最優先事項であり、流体システムの安全なオペレーションに向けた大きな動きが見られた場合は、注意が必要なのは言うまでもありません。
2021年3月、国際石油・天然ガス生産者協会(IOGP)は、 S-716:Specification for Small Bore Tubing and Fittings(小口径チューブと継手に関する仕様)の最新版を公開しました。この仕様は、オイル/ガス産業アプリケーションで使用する 小口径チューブ、 チューブ継手、パイプ、システム部品の標準要件を規定しています。この要件は、流体システム部品の設計、材料の選定、取り付け、テスト、検査、マーキングに重点を置いています。
最新の仕様では、さまざまな業界のステークホルダーの意見を求め、オイル/ガスの流体システムの一般的な安全性の向上、ならびに総所有コストの削減にも役立つ主要なパラメーターを決定しました。オイル/ガス分野の専門家が注目すべきポイントは、以下の通りです:
漏れのないパフォーマンスについてチューブ継手のタイプを比較する
まずS-716は、 圧縮チューブ継手の使用について規定しています。圧縮チューブ継手は、フレアレスのダブル・フェルール継手と定義されています。この仕様を満たすには、シングル・フェルール継手を使用することはできません。
というのは、シングル・フェルール継手は、振動やオペレーションに伴う応力などにさらされるアプリケーションでは漏れが生じやすいためです。これはオイル/ガス生産者にとって、システム全体で漏れのない接続を維持する上で参考になるパラメーターと言えるでしょう。
確実にチューブをグリップし、直接かつ軸方向にサポートする
ヒンジ・コレット機能を備えた継手であれば、
大半のアプリケーションに適しています。
ポイントとなるのが、シングル・フェルールとダブル・フェルールの設計上の違いです:
- シングル・フェルール の継手(別名:食い込み継手)は、単一の接触部(フェルール先端部)でチューブ外周をグリップします。接触部が1か所しかないため、流体システムのオペレーションに固有の脈動、衝撃、振動などの影響が続くと、緩みが生じるおそれがあります。
- ダブル・フェルール の継手(別名:圧縮継手)は、チューブの接触部とグリップ個所が他にもあることから、漏れのないパフォーマンスを実現するのに適した選択肢といえます。
ただし、 どの圧縮チューブ継手も同じように製造されているわけではありません。確実にチューブをグリップし、直接かつ軸方向にサポートするヒンジ・コレット機能を備えた継手であれば、大半のアプリケーションに適しています。この構造により、振動の影響を緩和し、漏れのないチューブ・グリップを維持することが可能になります。
製品の混用禁止
最新の仕様では、使用するチューブ継手のブランドを統一することを要請し、異なるメーカーの継手との混用を禁じています。S-716では、他の著名な仕様に賛同する形で混用を禁じ、業界を超えた継手の普遍的な慣行を奨励しています。
異なるメーカーの部品を混用すると、パフォーマンスを
予測することができなくなります。
なぜなら、たとえ同じ材料から部品を製造していたとしても、材料の組成が異なることがあり、耐食性や耐熱性にわずかな差が生じる場合があるためです。また、チューブ継手には規格化された設計基準が存在しないため、部品自体の公差や設計仕様が異なることもあります。こういった理由から、異なるメーカーの部品を混用すると、漏れや安全上の問題など、現場で予測不能な事態が起きかねません。
材料に関する新たな要件およびコスト効率の高い材料の組み合わせ
S-716ではさらに、業界認定の6-moly(6Mo)の材質グレードとして、UNS N08637(6HN)とUNS S31254(合金254)の2つを認めています。6HNは、6Moの中でも特に強度が高く、塩化物による応力割れに対する耐性に優れています。6HNを採用することで、システムのパフォーマンスや安全性を向上させることが可能です。また、チューブと継手の適合性を判断する際に重要なチューブ硬度に関する新たな要件も追加されています。
グレードの高い合金については、同じ合金製の継手とチューブを使用するべきというのが従来の考え方ですが、これは必須というわけではなく、コストがかさむだけというケースもあります。この点をふまえて、S-716では、高レベルのパフォーマンスとコスト効率を実現する 異材質の組み合わせ、つまり材質の異なるチューブと継手の使用を認めるようになりました。
異なる材質を組み合わせる場合は、継手メーカーがその組み合わせを認めているかを確認してください。というのは、材料の組み合わせを評価するには、材料の適合性だけでなく、チューブの肉厚、使用圧力、使用温度などさまざまな要因が影響するためです。信頼性の高いメーカーであれば、 ニーズに適した組み合わせ を提案できるはずです。
取り付けに関するベスト・プラクティス
最後に、この仕様には、組み立てに関するトレーニングの新たなガイドラインとして、「チューブ・システムは、継手メーカーが認定する製品トレーニング・プログラムまたは同等のプログラムによって認定を取得した作業員が取り付けるものとする」と記載されています。このような トレーニング を受講することで、高圧、振動、温度変化などが日常的に生じるアプリケーションで求められる漏れのない接続を行うことができます。
今回の仕様のアップデートによって、より安全で信頼性の高いオイル/ガスの流体システムのオペレーションが、世界各地で実現するものと確信しています。チューブとチューブ継手、材料、トレーニングといった要素を適切に選ぶことが重要であり、標準化が進むことで、業界のさらなる発展が期待されます。最新のS-716仕様やその影響に関する質問がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。
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