バルブのメンテナンスおよびトラブルシューティング・ガイド
バルブのメンテナンスおよびトラブルシューティングの方法:バルブのメンテナンス・ガイド
バルブは、産業用流体システムにおいて非常に重要な部品のひとつであり、最適な流量レベルを制御・維持する役割を担っています。バルブの機能性が、オペレーション効率、収益性、安全性の鍵を握っていると言っても過言ではありません。したがって、流体システムのバルブのメンテナンスや修理は、計画的に行いましょう。
それでは、バルブのメンテナンスやトラブルシューティングに関して、どのような知識が必要なのでしょうか。今回は、バルブのメンテナンスの基本について紹介します。
適切なメンテナンスは取り付けから
バルブをはじめとする流体システム部品が、実際に使用した際に最適なパフォーマンスを発揮できない理由のひとつに、取り付けが適切でないことが挙げられます。バルブを適切に取り付けていれば、その寿命が尽きるまで、継続的なメンテナンスの頻度を削減することができます。以下のベスト・プラクティスに従うことで、自信を持ってバルブの取り付けを行うことができます:
✔ 必ずメーカーの取り付け手順説明書に従ってください。取り扱い説明書をよく読む、トレーニング に参加する、動画を見るなどして、取り付けや取り外しの正しい手順を確認してください。
✔ システムの性能およびオペレーション・パラメーターを確認してください。例えば、バルブを使用する際は、システム内の温度や圧力がバルブの定格を超えることがないように注意してください。
✔ アクセス性および将来メンテナンスを行うケースを考慮して、十分なスペースを確保した上で取り付けてください。バルブのメンテナンスは、基本的に手作業で行います。可能な限り、容易にアクセスできる場所にバルブを取り付けてください。
✔ バルブは可能な限り、固定された場所にしっかりと取り付けてください。バルブの両側のチューブやパイプには、可能な限り適切なサポートを使用することで、振動を最小限に抑えてください。
✔ 流体が正しい方向に流れるよう、正しい向きでバルブを取り付けてください。
✔ 取り付け後、漏れが生じていないことを確認してください。
✔ コンタミネーションを防止してください。流体システムにフィルターを追加して、パーティクルを除去してください。パーティクルは、バルブの適切なオペレーションの妨げとなるおそれがあります。パーティクルを除去しなかった場合、バルブ・シートの損傷、プロセス流体のコンタミネーション、システム全体の流量の減少が生じるおそれがあります。
上記のポイントを考慮してバルブを取り付けることで、適切にセットアップすることができ、長期間にわたって信頼性の高いオペレーションを実現することができます。
バルブの予防保全およびトラブルシューティングを行う
バルブを取り付けたら、信頼性の高いオペレーションを維持するべく、予防保全のスケジュールについて検討してださい。予防保全(PM)を行うことで、いずれ必要となるトラブルシューティングの頻度を減らすことができます。
しかし、流体システムはひとつとして同じものはないため、PMスケジュールはシステムのニーズに基づいて設定する必要があります。圧力、温度、プロセス流体の化学成分、一定時間内にバルブを締め切る回数など、さまざまな要因によってバルブの耐用年数が変動する可能性があることを考慮してください。また、バルブのサプライヤーに、PMに関する情報やアドバイスについて確認してみることをお勧めします。
大切なのは「安全第一」です。
バルブのメンテナンスは、常に安全第一で行ってください。社内の安全手順に従って、各バルブのメンテナンスまたは修理を行ってください。磨耗または損傷が生じているバルブ部品は、修理または交換が可能な場合もあります。それを見極める際は、必ずメーカーに相談してください。疑わしい点がある場合は、安全を確保するためにバルブ全体を交換してください。
PMスケジュールの目的とは、パラメーターに関わらず、バルブが適切に動作しているかを定期的に確認することです。一般的に、漏れが生じているということは、軽微なものであれ重大なものであれ、適切なオペレーションが行われていないことの表れと言えます。漏れは、五感で発見することができます。例えば、臭いに気付いたことがきっかけとなって化学物質の漏れを目視で発見する、または超音波装置や漏れ検出液を使用して漏れを発見することが可能です。バルブの漏れに気付くことで、漏れを見過ごしたことで生じる深刻な問題を未然に防ぐことができます。
漏れの一般的な原因として、信頼性の低い金属同士のシール、システム内のコンタミネーション、エンド・コネクションの不適切な取り付け、チューブの選定や前処理の不備などが挙げられます。以下のバルブのトラブルシューティング手法によって、最適な対応策を決定してください:
バルブのテストを行います。バルブのオペレーションを確認し、漏れのタイプを見極めます。バルブの漏れには、主に2つのタイプがあります:
- シート・リーク:漏れはバルブ内部に収まっているものの、流体がシールを通過し、バルブが流れを止めることができない状態
- 外部リーク:流体がバルブの外側に漏れ出し、バルブのステムやボディから大気中に放出されている状態
漏れのコスト
漏れは、コスト、安全性、生産性、環境への影響を考えると、可能な限り少なく抑える必要があります。例えば、油圧継手から1分間に6滴の流体(1滴は0.05 ml)が漏れていると仮定します。これは1日あたり0.5 リットル、1か月あたり約15 リットル、1年あたり約180 リットルに相当します。油圧流体のコストを1 リットルあたり4ドルと仮定すると、漏れによって失われるコストは、年間700ドル以上になります。
バルブの検査を行います。シート、Oリング、ステム・チップなどの内部部品に摩耗や損傷が生じていないか調べます。
バルブの修理を行います。摩耗した部品(シート、パッキン、ステムなど)は、検査の結果に基づいて、バルブ全体ではなく、当該部品を交換するだけで良いケースも少なくありません。場合によっては、バルブのオーバーホールが必要になることがあります。つまり、摩耗した内部部品をすべて交換することになります。修理用のシール・キットにつきましては、バルブのサプライヤーまでお問い合わせください。
バルブのメンテナンスを行います。任意のアプリケーションにおいてバルブの摩耗が発生するしくみを十分に理解した上で、PMのスケジュールや手順を調整してください。個々のバルブが担っている役割や必要な検査の頻度を、素早く容易に、かつ視覚的に示すには、タグを使用しましょう。
バルブの交換時期
バルブの修理ではなく、新しいバルブとの交換が必要な場合があります。重要な部品に重大な損傷などが見られる場合は、交換する必要があります。例えば:
- バルブ・ボディが激しく腐食して劣化し、圧力保持機能が損なわれているため、安全上のリスクがある場合。
- 洗浄できないような深刻なコンタミネーションが生じている場合
- バルブのエンド・コネクションを過度に締め付けたことでバルブが損傷し、再取り付けが不可能な場合
損傷していなくても交換が必要な場合もあります。新しいバルブのコストと、既存バルブの修理コスト(およびそれに伴う労力やテストを含めて)とを比較して、どちらにすべきかを決めましょう。生産のダウンタイム(停止時間)が生じる可能性は、どのメンテナンス作業においても考慮することが重要です。
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信頼性の高いバルブのオペレーションは、流体システム全体の健全性および安全性に欠かせません。バルブの適切な取り付け方法を熟知し、バルブのトラブルシューティング方法を理解し、バルブのPM計画を適切に実施することで、安全かつ効率的、そして収益性の高いオペレーションを実現することができます。
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